パソコン業務で指の関節に続く痛み…原因や治療法を医師が解説 40代以上の女性に多いヘバーデン結節とは

パソコン業務で指の関節が痛い…原因や治療法を医師が解説

 パソコンを使う業務を20年近く続けているのですが、8年ほど前から手の指の関節に痛みを感じるようになりました。そのうち何もしていない状態でも、指の第一関節が少し曲がった状態になってしまい、痛みからテーピングをして仕事をしています。治療法やこれ以上ひどくならないための予防法はありますか。(福井県福井市、50代女性)

【お答えします】高嶋理・福井赤十字病院リハビリテーション科第二部長

ヘバーデン結節、40代以上女性に多く

 手指の腫脹(腫れ上がる)・変形を生じる疾患は多数存在しますが、相談者の年齢、症状、発症部位から判断するとHeberden(ヘバーデン)結節という病気を最も疑います。

 へバーデン結節について説明します。1802年に英国の医師ヘバーデンが初めて報告したためこのような病名となっていますが、200年たった現在でもはっきりとした原因は不明です。

 発生要因としては遺伝的な素因があるといわれています。40代以上の女性に多く、年齢が高くなればなるほど発生頻度も高くなります。全身の関節症(外傷などの特別な原因がなく全身の種々の関節が変形していく病気)との関連性や、手指を酷使する作業への長期間の従事や、スポーツ、外傷と関連性があるとの意見もありますが、はっきりとしたことはわかっていません。

 症状は主に遠位指節関節(手指第一関節)の疼痛・腫脹の出現から始まり、その後時間の経過とともに疼痛・腫脹は軽快していきますが、指の変形、可動域制限(手指の動く範囲の減少)が出現してくることが多いです。また、第一関節に粘液嚢腫(のうしゅ)(水のたまった袋ができる状態)を合併することもあり、これも自然治癒したり、もしくは大きくなって自潰(じかい)(袋が破れる)し傷口がふさがるまでに時間を要したりすることがあります。

根本的治療法なく、状態に合わせて対処

 治療法ですが、現在においても根本的な治療法はありません。その時の状態に合わせて対処していくことが治療方針となります。疼痛・腫脹の強い時期には、テーピングや添え木にて局所の安静を図り、外用剤などを併用しながら疼痛・腫脹が消退してくるのを待ちます。関節の変形が高度となり、外観や機能上の問題が大きくなった場合には、関節固定術という手術を行う場合もあります(変形は矯正されますが、第一関節は動かなくなります)。また粘液嚢腫ができ、疼痛が強く、自潰を繰り返す場合には、嚢腫の摘出術や、嚢腫の原因となる骨棘(こつきょく)(病的にとげのように骨が増成した状態)の切除術を行う場合もあります。

 へバーデン結節自体は、手指の変形のみの症状で全身に影響を及ぼすことはありません。しかしその他の手指変形をきたす疾患として関節リウマチがあげられます。関節リウマチは全身に影響を及ぼす進行性の疾患で、積極的な治療が必要となります。しっかりとした診断をつけるために、また現在のへバーデン結節の状態に合わせた治療方針のアドバイスを受ける意味でも、一度整形外科での診察を受けることをお勧めします。

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