プラ肥料殻 水田から用水路流出 岡山県南各地 環境への悪影響懸念

用水路にびっしりとたまったプラスチック肥料殻を網ですくい取る平井代表。今夏、各地で田からの流出が確認された=岡山市南区藤田

 岡山県南各地で今夏、農業の肥料に使われたプラスチック製の殻が、水田から用水路などに流出しているのが確認された。国や県が田植え時期前に流出防止対策を農家に呼び掛けたものの、十分な効果が上がったとはいえない結果だ。プラ殻はいずれ海に至り、環境への悪影響が懸念される。

 岡山市南区藤田の水田地帯にある幅1.5メートルほどの用水路。閉じられた水門の上流に、プラ肥料殻が数メートルにわたってびっしりと浮かんでいた。

 環境団体「釣り人みんなで海を守ろう、釣りのついでにゴミ回収」の平井雅明代表が、網ですくってバケツに回収する。すぐにいっぱいになって何度も繰り返すが、容易には取り切れない量だ。

農家の意識向上

 田から用水路などへの流出は、田植え前に水を入れて土をならす代かき作業で起きるのが9割に上ると指摘される。前年までにまかれて土中にあった殻が出てきて水に浮き、水位調整の排水などで流れ出る。

 今夏も代かき・田植え後に、用水路への流出が目立った。その後も降雨時などに、田に残っていた殻が流れ出ている。県南部で回収のボランティア活動をしている平井代表によると、百間川、笹ケ瀬川、倉敷川など岡山、倉敷、玉野市の干拓地の水田地帯で多く確認された。

 中国四国農政局や県は今春、低い水位の浅水で代かきを行って排水をしないなどの流出防止対策について、動画やチラシで農家にアピールした。

 今夏、浅水にして対策をしている水田が例年より多く見られた。「環境に配慮するよう農家の意識が変わってきているのは確かだ」と県農産課。ただ、流出が目立って減ってはいないようだ。田によって状況も違い、農家からは「浅水での代かきは容易ではない」といった声もある。

「代替」実証試験

 県は本年度、プラスチックを使わない代替肥料の効果を確かめる実証試験を県内15カ所で行っている。これとは別に全国複合肥料工業会などの肥料メーカー側は今年初め、「2030年にはプラスチックを使用した肥料に頼らない農業にする」と代替肥料の開発などの方針を示した。

 しかし、いずれにしても実用化できるのはまだ先だ。中国四国農政局は「農家への働き掛けを徹底していきたい」とする。当面は農家による流出防止に対策をゆだねているのが実情だ。

 平井代表は「肥料メーカーは対策を農家に頼るだけでなく、肥料殻の流出防止や回収に責任を持つべきだ」と指摘する。

 プラスチック殻の肥料 1970年代に登場し、農業で一般的に使われている。肥料成分が少しずつ染みだし、効果が長持ちして施肥作業を軽減し、農業に欠かせない存在となっている。殻は1粒が直径3~5ミリで、海洋汚染が懸念されているマイクロプラスチックでもある。

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