他人に言いにくい悩み抱えるサイレント・マイノリティ…誰もが生きやすい社会を作るには?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、“サイレント・マイノリティ”について、キャスターの田中陽南が取材しました。

◆声を上げられない少数派"サイレント・マイノリティ”とは?

ここ数年、多様性やダイバーシティという言葉が広まり、LGBTQやフェミニズム、夫婦別姓などメディアでよく取り上げられるものは人々の理解が進んできた一方で、声を上げられない悩みを持つ人"サイレント・マイノリティ”も大勢います。

若者の声を社会に届ける活動をしている"coe”プロジェクトの発表によると、10~20代の若者の約6割がひとりで悩んで孤独を感じているそう。

そして、その内容は「みんなの前に立って発表するときに極度に緊張し、声や体が震えてしまう」といった性格に関するものから、「顔に自信がなく、周りの視線が怖くて店に入れない」など外見の悩みまで、人それぞれ。

今回、番組が取材をした22歳の男性が悩んでいたのは、一般的な人よりも異常に汗をかく「多汗症」という疾患。特に手足に症状が出やすく、日常生活でもさまざまな支障をきたしているそうです。しかし、疾患のことを伝えているのは「家族だけ」という状態。他人には言うことはできず、10年以上一緒にいる幼馴染にも「隠しながら生きている」と現状を語ります。

多汗症に詳しい「池袋西口ふくろう皮膚科クリニック」の藤本智子院長によると、多汗症に悩む人の多くは若い世代。現在は患者自体が声を上げようとNPO法人が設立されているほか、藤本院長は「汗が出ている自分を親しい人に打ち明けてみると、実は『そうなんだ』と理解してくれるだけで心が軽くなったりする。多汗症の知識・理解がもっと広まれば」と希望します。

◆誰しもが「生きやすいと思える未来」を目指して

前述の"coe”プロジェクトは、生きづらさや孤立を抱え悩む若者に向け、より良い未来を作ることを目指し、発足。

そのメンバーのひとり、伊藤幹ディレクターはこうした風潮に関して「人に比べて苦手な部分があるなど、そうした悩み・課題を抱えている人たちの多くが誰かに相談したくても言い出せずにいることが明らかになっていて、若者世代では7割以上がそう感じている」と説明します。そして、「我々はそれを"サイレント・マイノリティ” という新しい社会課題と捉え、アプローチしていく」と話します。

生田綾編集長が子ども食堂で出会った京都出身の大学生が悩んでいたのは、貧困。彼女は、学費・生活費は全て自分で払わなければならず、大学に入ってから、周囲の遊び方や暮らしぶりに無意識の差別を感じたそうです。「全ての大学生が仕送りをもらって生きているという前提を押し付けられるのが嫌。そうじゃない人もいると思うことがある」という思いを周りにはなかなか言えず、ギャップに苦しんでいたようです。幸いにもその子ども食堂が温かい場所で「彼女にとっても救い・助けになっているんじゃないか」と生田編集長。

大切なのは、多汗症の男性も貧困の女子大生も、そして私たち一人ひとりも全員が同じように「生きやすいと思える未来」を目指すこと。

伊藤ディレクターは「ダイバーシティというと、LGBTQなど一部の名前が付いている社会的少数派の人たちを指す言葉になっている節があるが、実際は人それぞれ抱えている課題、背景・境遇も違う。広い意味でのダイバーシティをみんなが理解していくことで、より寛容的で生きやすい社会になっていくんじゃないか」と望んでいました。

◆マイノリティだけでなく、マジョリティにもやるべきことが

インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは、「一人ひとりが持つ"生きづらさ”を社会問題として解決していくことが必要」、「いろいろなところに目がいくのは本当に大事なこと」と再確認し、"coe”の活動に興味を示します。

生理への理解を広げる団体「#みんなの生理」共同代表の谷口歩実さんは、"サイレント・マイノリティ”という言葉に対し「マイノリティである以上、サイレンスを強いられていることがよりここで強調されたと思う」と憂いつつ、「こうしたレポートを見て共感した人が一緒に声を上げ、社会の構造や身近なルールを変えていく、そういうアクションに繋がれば」と期待を寄せます。

サイレント・マイノリティに関するレポートには、人には言いにくいが知ってもらいたい多くのコンプレックスが記載。例えば、性格に関しては「ストレスに感じることがあると、何も手につかなくなる」、「大声を出す人が苦手」など。外見では「肌荒れがしやすい・鼻が汚れている」、「声がこもりやすい」など。人間関係についても「軍歌が好きで変わっていると言われた」、「人に何かを頼むのが苦手」など、さまざまな悩みが挙げられています。

こうしたなか、microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは「打ち明けることが正しいという風潮も、もしかしたら良くないかなと思う」と言い、「(人のコンプレックスに対し)つべこべ言わないような環境作りが大事」と指摘。

打ち明けることを是とする同調圧力に違和感を覚えるとし、「他人に言えないことを抱えながら生きているのが人間だと思っているので、そうしたことを周囲が当たり前に受容する環境、そのための教育とかが大事」と主張します。

そんな渋谷さんの意見に、能條さんは「同質的な価値観が良いという教育を受けてきてしまうと周囲との違いにコンプレックスを感じやすくなってしまうので、その根底は変わるべき」と同意する一方で、「やはり悩みがあるときに相談することで楽になることはたくさんあると思うので、その両輪が必要だと思う」とも。

また、谷口さんに向け「生理への理解を広げる活動も、もともとはサイレント・マイノリティと言われるようなことで、声を上げたからこそみんなが課題だと話せるようになったと思う」と称賛する能條さん。

これを受け、谷口さんは「私は生理の貧困の当事者ではないが、生理を経験している身から声を上げたというところで、100%当事者でなくても周りにいる当事者に近い人や理解者が声を上げ、先頭に立つ、そういう形があってもいいんじゃないか。私は当事者が前に立つことは、負担がかかってしまうので抵抗がある」と自身の経験を踏まえて語り、「渋谷さんが言うようにマジョリティ側にできることも考えたい」と力を込めていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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