「孤立させてはならない」 民間企業、ウクライナ避難民支援 行政含めた継続求める 佐世保

ピンク色のランドセルを受け取ったアナスタシアちゃん(右)とイーナさん=佐世保市南風崎町、長崎日本語学院

 ロシアの侵攻が続くウクライナから、家族4人が長崎県佐世保市に避難してきて約3カ月が過ぎた。県内で唯一、家族で避難してきた4人を全面的に支えるのは一民間企業。侵攻の終わりが見えない中、支援者は行政も含めた息の長い支援を求めている。
 8月のある日。長崎日本語学院の教師で、生活面をサポートする森伊作さんが、新学期から市立小に通うアナスタシアちゃん(8)にピンク色のランドセルを手渡した。「プリティー」。目を丸くしたアナスタシアちゃんは親指を立てて喜んだ。
 一家は6月、ハウステンボスで活動するボーカルユニット「マキシマム」のアレク・パシコウスキーさんが暮らす佐世保市に避難してきた。首都キーウから南西約200キロのヴィーンヌィツャで暮らしていたアレクさんの母、ナタリアさん(59)と姉のイーナ・サマルカさん(39)、イーナさんの長男のアレックスさん(16)、長女のアナスタシアちゃん。「順調だった生活」は、爆撃が迫り緊急アラートにおびえる生活へと一変した。
 一家を物心両面で支えるのは、同学院を運営する南風崎MGレヂデンス(本岡吉彦社長)。生活拠点の部屋と食事を提供し、週に3回、学院の他の生徒と別枠で日本語を教える。本岡社長は「人間らしい生活を送り、日本に来てよかったと思ってほしい」と見守っている。

 県によると、ウクライナから県内に避難してきたのは21人。自治体や大学などが受け入れ、学校に通うなどしながら異国の地で生活している。
 森さんが感じるのは、衣食住の支援だけでは不十分だということ。言葉や文化が異なり、買い物一つとっても難しい。森さんは、日用品の買い出しに付き添い、小学校で使うランドセルやシューズなどもそろえた。地域社会に溶け込めるよう、アレックスさんに来春からの高校進学を後押しし、ナタリアさんとイーナさんの就職先も探す。「受け入れて終わりではない。孤立させてはならない」。一家と地域社会が関わる機会を持たせたいと考えている。

 懸念するのは、社会の関心が持続するかどうか。避難時に佐世保市と県が渡した一時金の財源は寄付。関心の低下が寄付額の減少につながれば、今後の援助にも影響してくる。
 ロシアの侵攻は終わる気配がない。学院の中野はるみ校長は「みんなが笑って帰れる日までサポートする」と決意。本岡社長は経済的にも支え続ける覚悟だが、期限のない支援を一企業が担うのは負担が大きい。
 もともとは国の方針で始まった避難民の受け入れ。森さんは「あらゆる面のサポートが必要で、受け入れの難しさを感じた。状況を把握した援助が必要だと思う」と自治体を含めた継続的な支援を望んでいる。


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