【9月6日付社説】文化部の地域移行/生徒の希望に沿った環境を

 文化庁の有識者会議が、吹奏楽や合唱、美術など公立中学の文化系部活動の指導を、休日は地域団体へ委ねるべきだとの提言をまとめた。スポーツ庁も運動系の部活動について地域移行を進める方針を打ち出しており、両庁は2023~25年度を「改革集中期間」に設定、自治体に推進計画の策定を求め、順次取り組みを始める。

 部活動は、少子化で学校単位での運営が困難になりつつあることに加え、教員の長時間労働の要因の一つとされる。これらの有効な解決策が見いだせない中、学校の枠を超え、地域で活動の場を確保することは自然の流れだろう。

 文化庁の調査では、中学生の2~3割が文化系の部活動に所属しており、音楽や美術のほか、最近はパソコン、自然科学、アニメなど多様化している。また、大会やコンクールでの活躍を目指す部活動がある一方、楽器演奏や創作活動などを友人らと楽しむために所属している生徒もいる。

 こうした子どもらのニーズを踏まえ、希望する活動に取り組めるよう、各自治体は学校や地域住民と環境づくりを進めてほしい。

 有識者会議は、委託先として地域の団体や民間教室、芸術系大学などを想定している。しかし地方では、受け皿となる団体や施設が必ずしもあるとは限らない。

 専門的な知識や技能、指導経験がある人材も同様だ。有識者会議は人材バンクを設けて指導者を派遣したり、オンラインを活用して合同練習や個別指導をしたりする事例を挙げている。しかし委託費や謝礼、通信費などの新たな負担が生じるため、国や自治体による予算措置が欠かせない。

 集中期間の開始まで半年余りだが、どの部活動を対象に、どのような形で地域移行を進めていくか明確になっていない部分が多い。文化庁には、学校や地域の実情に応じ、柔軟に対応できるような制度設計が求められる。

 国は、関係者間の連絡・調整などを担うコーディネーターを各市町村に配置する方針だ。地域の文化芸術団体や民間事業者と学校の仲介役を務め、活動場所や指導者派遣などを調整するという。

 国は将来的に、平日の活動も地域移行を検討する方針で、コーディネーターが担う役割は大きい。学校現場などを熟知した適切な人材を登用してもらいたい。

 音楽や美術などは、年齢や体力に関係なく、幅広い世代が一緒に親しむことができる。単に学校の部活動の問題と捉えず、地域の文化を活性化させるような、大きな観点で改革を進めていくべきだ。

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