バレンティーノ・ロッシ、2023年もWRTからGTWCヨーロッパに参戦へ。ニュル挑戦にも意欲

 2021年をもって長年活躍したMotoGPを引退し、今シーズンから四輪レースのキャリアをスタートさせたバレンティーノ・ロッシ。お馴染みのゼッケンナンバーである“46”を掲げるアウディR8 LMSエボIIを駆り、ベルギーのチームWRTからファナテック・GTワールドチャレンジ(GTWC)ヨーロッパのエンデュランスカップとスプリントカップの両シリーズに参戦している“レジェンド”がドイツ、ホッケンハイムで開催された今季第8戦の定例記者会計において、今後の活動についての構想を語った。

 現在ロッシが所属しているWRTは、2022年シーズンの終了をもって長らく提携してきたアウディと袂を分かち、新たにBMWとパートナーシップを結んで2024年から同社のLMDhカー『BMW Mハイブリッド V8』でWEC世界耐久選手権に参戦することは既報のとおりだ。

 一方、ベルギーのチームがGT3プログラムもBMWへ全面的に移行するのかは、現時点では明らかにされていない。しかし内部関係者によると、WRTはすでに6台のBMW M4 GT3の新車をオーダーし、9月9日にはそのうちの1台がデリバリーされる予定だという。

 また、9月30日~10月2日にバルセロナで開催されるGTWCヨーロッパ最終戦の後に、WRTがM4 GT3のテストを行う予定で、BMWのワークスドライバー以外の複数の有名ドライバーの名も参加者に挙がっているとの情報を得た。さらに、ロッシもこの日初めてBMWのステアリングを握る予定とのうわさも入っている。

 9月最初の週末に行われたホッケンハイム戦の記者会見で、「WRTからは来季のGTプログラムに関して、正式にBMWと契約を締結していないと言われている」と語ったロッシは来季もWRTに留まるが、どのメーカーのマシンで参戦するかは現時点ではわからないとした。ただし、関係者から聴取した限りではWRTがLMDhプログラム同様に、GTもBMWへスイッチするのは間違いないだろう。

 ロッシはMotoGPを戦っていた当時からBMWのZ4 GT3でレースに参戦することを強く希望しており、実は過去に2度BMWとロッシのマネジメント側との話し合いが持たれていた。

 当時のBMWではZ4 GT3でカスタマーレーシングを稼働したばかりで、非常に小規模な体制で行われていたこともあり、キャパシティオーバーのためにロッシの申し出を苦渋の決断で辞退した過去がある。しかし、現在のBMWは数年前にM2 CSカップ、M4 GT4、M4 GT3の全カスタマーレーシングをM GmbHの管轄へと完全移行し、ワークス活動と分離したことでキャパシティが増えた。長年BMWでレースをすることを望んでいたロッシにとっては来年、ようやく希望が叶うことになるかもしれない。

チームWRTの46号車アウディR8 LMSエボII 2022年GTWCヨーロッパ第8戦ホッケンハイム

■ニュルブルクリンク24時間参戦に向けた話し合いも

 そんなロッシは、2012年にGTWCの前身であるブランパン耐久シリーズに参戦していた際に、ランボルギーニでニュルブルクリンクの北コース“ノルドシュライフェ”を初めてドライブし、ニュルの魅力に取りつかれたと言う。

 以来、彼は「いつかはニュル」という強い希望をこの10年来温め続け、すでにWRTの代表を務めるヴァンサン・ボッセとニュル24時間レースへの参戦計画について話し合いを持っていることを認めた。

 ニュル24時間レースへ参戦するためには専用のライセンスを取得する必要があり、たとえ元F1ドライバーやWECのトップカテゴリーを戦うプラチナカテゴリのドライバーであっても、ライセンス取得の講習会に参加し、一般のドライバーと同様に排気量の小さなクラスのマシンからNLSニュル耐久シリーズ等、ノルドシュライフェで開催されているレースに出場して経験を重ね、規定の条件をクリアしなければならない。

 そのことも踏まえて、ロッシは「(専用ライセンスの取得に関する)プロセスは非常に複雑だが、来年はそれに取り組むことになるだろう」とコメント。MotoGPライダーを退き、キャリアをGTレースへとスイッチしたことで、以前よりはニュルのライセンス取得に費やせる時間を得られる可能性が出てきたということだろう。

 彼が2023年中にニュルのライセンス取得を目指すのか、それとも来年の5月18日~21日に開催予定のニュル24時間レース参戦を目標にするのかは不明だが、いずれにしてもロッシがニュル24時間に参戦する日も遠くなさそうだ。

 また、今回の定例記者会見では、ロッシが来年のGTWCヨーロッパに引き続きWRTから出場することを明言したうえで、「1戦か2戦、GTWC以外のレースにも出場する可能性がある」とも述べているだけに、そのレースが何になるのか気になるところだ。

ファンサービスを行う“レジェンド”バレンティーノ・ロッシ 2022年GTWCヨーロッパ第8戦ホッケンハイム

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