小惑星ポリメレに「月」を発見。探査機ルーシーの新たな探査対象に

【▲小惑星ポリメレの想像図(Credit:NASA's Goddard Space Flight Center)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)が、2021年10月に打ち上げた小惑星探査機「ルーシー(Lucy)」は、木星のトロヤ群小惑星7つと小惑星帯の小惑星1つ、合計8つの小惑星の探査を目的としています。順調にいけば、これまでのどのミッションよりも多くの小惑星を訪れる予定ですが、さらに今回、その訪問先リストに新たな小惑星が加わることになりそうです。

■小惑星ポリメレに衛星が存在?

2022年3月27日、ルーシーのミッションチームは、ターゲットの1つである小惑星「ポリメレ(Polymele)」が独自の衛星を持っていることを発見しました。

【▲小惑星ポリメレとその衛星の距離感を表わしたイラスト(Credit:NASA's Goddard Space Flight Center)】

その日ポリメレは、恒星の前を通過する「掩蔽(えんぺい)」の観測が予測されていました。掩蔽とは、ある天体が別の天体の前を通過し、後者の天体が観察者の視界から遮られる現象のことです。最もよく知られている例は、月が太陽と地球の間を通過し、太陽が私たちの視界から遮られるときに発生する日食です。

ミッションチームは、プロとアマチュアの天文学者からなる26のチームを、掩蔽が見える経路全体に分散、配置することによって、ポリメレの位置、サイズ、および形状を高い精度で測定し、その背後にある星の点滅によってポリメレの輪郭が描かれるように計画しました。

14のチームが掩蔽の際に星が点滅するのを観測したと報告しましたが、2つのデータが他のものと異なっていることが判明。ミッションチームが観測データを解析したところ、ポリメレから約200km離れた場所に、直径約5kmほどの物体を検出したといいます。また、その物体は、最大幅が約27kmのポリメレを周回している「月」(ポリメレの衛星)であると評価されました。

【▲掩蔽観測によるデータ。左が小惑星ポリメレ、右が新たに発見された衛星の輪郭(Credit:NASA's Goddard Space Flight Center)】

小惑星の命名規則に従い、軌道が確定するまでこの衛星に正式な名称は与えられません。また、この衛星はポリメレに近すぎるため、地上の望遠鏡や地球を周回する望遠鏡でははっきりと見ることができないのです。

詳細を調べるには、再び掩蔽観測の幸運に恵まれるか、2027年にルーシーが小惑星に接近するまで待たなくてはなりません。

■アップデートするルーシーミッション

【▲ ルーシーがフライバイ探査を行う小惑星の一覧(想像図)。上段左から:二重小惑星のパトロクロスとメノイティオス、ユーリバテス。下段左から:オラス、リュークス、ポリメレ、ドナルドヨハンソン。このうちユーリバテスは1つの衛星をともなう(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center Conceptual Image Lab)】

ルーシーのチームは当初、7つの小惑星を探査する計画を立てていました。ところが、その後にハッブル宇宙望遠鏡によって探査対象の小惑星「ユーリバテス」に小さな衛星が見つかり8つとなりました。

そして今回、ポリメレの衛星が加わったことで、12年間におよぶ航海で9つの小惑星を探査する予定になり、計画が変更されたことになります。

NASAの科学者Tom Statler氏は、「ルーシーミッションは『12年、7つの小惑星、1つの宇宙船』のキャッチフレーズで始まりましたが、良い意味でキャッチフレーズを変え続けていかなくてはなりません」と語っています。

関連:探査機ルーシー、ボイジャーの様に未来の人類へ向けたメッセージを搭載

Source

  • Image Credit: NASA's Goddard Space Flight Center
  • NASA \- NASA’s Lucy Team Discovers Moon Around Asteroid Polymele
  • NASA \- Watching the Blink of a Star to Size Up Asteroids for NASA’s Lucy Mission

文/吉田哲郎

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