規格外野菜提供、子ども会で食材持ち寄り 雲仙で広がる「食品ロス減」活動

フードドライブで住民から食材を募った牛口西地区の子どもたちと保護者ら=雲仙市吾妻町牛口西公民館

 企業や団体から寄付された食材を生活困窮世帯に提供する「フードバンク」と、家庭などで余った食材を持ち寄る「フードドライブ」。どちらも食品ロスを減らし、持続可能な開発目標(SDGs)に沿う取り組みだ。長崎県を代表する農業生産地の雲仙市では、その強みを生かして、規格外の野菜をフードバンクで提供。さらに「もったいない」意識の浸透を図ろうと、子ども会が中心になったフードドライブの動きも始まっている。
 フードバンクは昨年12月から始まった市社会福祉協議会の「つなぐBANKうんぜん」。一般社団法人ひとり親家庭福祉会ながさき(長崎市)の「つなぐBANK」と連携して、企業などから米やレトルト食品、加工食品、菓子などを調達。生活に困窮しているひとり親の30世帯に隔月で配っている。
 提供するのは長期保存できる食材が中心で、野菜などの生鮮品が不足するのが悩み。だが、雲仙市では、取れたての野菜が青果卸業者に日々持ち込まれる環境を生かし、大きさや形が流通の基準を満たさない規格外野菜をフードバンクで活用しているのが特徴だ。
 島原半島産野菜の卸業マルヨシ(同市愛野町)は、生産者から仕入れた旬の野菜を従業員が手作業で選別。例えばキュウリは、形が真っすぐな物を流通に回し、曲がった物は規格外品になる。規格外品は自社の野菜直売所で安く販売し、フードバンク実施日に同市社協に無償提供している。
 「生産者が育てた野菜を無駄にしたくない」。同社が直売所を設けたのは昨年12月。それまで規格外品は廃棄していたが、販売することで処分費用を8割近く削減できたという。同社の卜部秀幸専務(45)は「規格外でも積極的に買い取ると生産者に伝えているので、わずかでも生産者の収入増につながっているはず」と話す。

生産者から仕入れたキュウリを仕分けるマルヨシの従業員=雲仙市愛野町

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 「ありがとうございます」。家庭で余った食材を届けた地域住民を、子どもたちの笑顔が囲む。同市吾妻町の牛口西子ども会は8月28日、地区の公民館でフードドライブを開いた。
 発案したのは同市社協でフードバンクを担当する柿川知一さん(45)。「ご飯を残す子どもに『もったいない』と言っても、伝わっているのか分からない。食品ロスについて考えてもらいたい」。自身が役員を務める同子ども会でフードドライブを開こうと企画した。
 同子ども会の小学生12人と保護者が受け付けや仕分けを担当し、地区の約30世帯から米や缶詰、菓子などの食材が集まった。松永美幸さん(39)と長女の璃(ひかる)さん(10)=同市立大塚小5年=は「アレルギーで食べられない物は、おいしく食べてくれる人に贈った方がいい」「捨ててしまったら生産者の労力も無駄になる」などと話し合いながら寄付する食材を選んだという。
 牛口四自治会の田口明正会長(71)は「フードドライブはなじみのない言葉だが、子ども会の活動なら年配の住民も関心を持って協力しやすい。回を重ねれば浸透していくと思う」と取り組みを歓迎。柿川さんも「初めてにしては多くの協力をいただいた。子どもたちに食品ロスについて考えてもらいながら、安定的に食材を集めてフードバンクを継続させたい」と手応えを感じている。フードドライブの開催を市内の子ども会に呼びかけていく考えだ。


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