上場企業3,795社 保有比率は6.41%、3年連続で低下 ~ 2021年度決算「外国法人等株式保有比率」調査~

  2021年度決算(21年4月期-22年3月期)の上場3,795社の外国法人等株式保有比率(以下、外国法人等比率)は、中央値で6.41%だった。前年度の6.79%から0.38ポイント低下し、3年連続で前年度を下回った。

 産業別の外国法人等比率の最高は、電気・ガス業の13.39%(前年度14.51%)。最低は小売業の2.45%(同2.87%)で、前年度からそれぞれ1.12ポイント、0.42ポイント低下した。
 企業別では、最高が台湾発の企業でAIプラットフォーム提供のAppier Group(東証グロース)の88.16%(前年度100.00%)。以下、クオンタムソリューションズ86.80%(同71.30%)、日本オラクル86.10%(同88.40%)の順。外国法人等比率80.00%以上は6社で、前年度の5社から1社増えた。
 一方、外国法人等比率10.0%未満は2,300社(構成比60.6%)だった。
 前年度と比較可能な3,661社のうち、外国法人等比率が前年度から低下したのは1,948社(同53.2%)で、企業数では2018年度から4年連続で『低下』が『上昇』を上回った。
 外国法人等比率は、2012年度は3.65%(1ドル=94.04円)だった。その後、円安局面や株価の割安感が強まり、2018年度は7.45%まで上昇したが、世界的に新型コロナ感染拡大で経済活動が停滞すると、3年連続で低下した。ただ、最近の株価はコロナ前を上回り、平均株価3万円近くで推移している。円安傾向のなか、株価は一進一退をたどり、外国法人等比率は低下している。
 こうした背景には、国内企業が投資対象として魅力が落ちたのか、日米の金利差による先行きの為替相場を見通した投資控えか、今後の推移が注目される。

  • ※本調査は東京証券取引所など、すべての証券取引所に株式上場している企業のうち、2021年度(2021年4月期-2022年3月期)決算(7月31日までに有価証券報告書を提出)を対象に、有価証券報告書の「株式等の状況」の所有者別状況(普通株式)の外国法人等を集計した。産業・業種分類は証券コード協議会の定めに準じた。

3年連続で外国法人等保有比率が低下

 2021年度の上場3,795社の外国法人等比率の中央値は6.41%だった。前年度の6.79%より0.38ポイント低下し、3年連続で前年度を下回った。
 2012年度後半に為替相場が円安にシフトし、業績好調な企業が増えた2018年度には外国法人等比率は7.45%まで上昇した。しかし、2020年度以降は、コロナ禍の長期化で経済活動が停滞したほか、その後も円安や資源高、人手不足が顕在化し、国内経済の回復遅れなどから外国法人等比率の低下に繋がっているようだ。

上場企業外国法人等保有比率

保有比率別 10.0%未満が約6割

 上場3,795社の外国法人等比率は、「10.0%未満」が2,300社(構成比60.6%、前年度2,190社)で6割を占めた。
 次いで、「10.0%以上20.0%未満」が733社(同19.3%、同760社)、「20.0%以上30.0%未満」が420社(同11.0%、同415社)、「30.0%以上40.0%未満」が206社(同5.4%、同204社)、「40.0%以上50.0%未満」が86社(同2.2%、同79社)の順。過半数の「50.0%以上」は、前年度と同数の50社(構成比1.3%)だった。
 また、取締役解任など会社の支配権には株式保有比率50.0%超が必要だが、外国法人等保有比率が50.0%超は50社で、上場企業の1%にとどまった。
 一方、外国法人等保有比率ゼロは50社(同1.3%、同62社)で、前年度より12社減少した。
 株式の併合、定款の変更、事業譲渡の承認、会社の解散など、株主総会の特別決議事項を単独で可決できる株式保有比率3分の2以上(66.6%超)が17社(構成比0.4%)。また、総会招集請求権、役員の解任請求権に必要な3.0%以上を保有するのは2,472社(同65.1%)で、上場企業の6割以上を占めた。

上場企業外国法人等保有比率

保有比率 半数以上の1,948社で低下

 上場3,795社のうち、前年度と比較可能な3,661社でみると、外国法人等比率が前年度より低下したのは1,948社(構成比53.2%、前年度1,902社)で、5割超を占めた。一方、保有比率が上昇したのは1,638社(同44.7%、同1,603社)、横ばいは75社(同2.0%、同70社)だった。
 4年連続で、保有比率が「低下」した企業数が「上昇」した企業数を上回った。
 為替相場が円高から円安にシフトした2013年度には保有比率の上昇が2,130社、低下が725社、横ばいが112社と、外国法人等が上場企業の株式投資に積極的に動いた。
 その後も、円安を背景に上場企業の業績が好調に推移し、さらに株価も上昇し、2017年度には上昇2,194社、低下1,056社、横ばい51社となった。
 近年は、為替相場は2020年度末が1ドル=110.7円、2021年度末が同121.6円と、円安が加速している。ただ、コロナ禍での世界的な景気停滞で、投資意欲は落ち込んだ。また、ポストコロナでの国内企業の魅力低下も、保有比率の低下に作用しているようだ。

上場企業外国法人等保有比率

産業別 最高は電気・ガス業の13.39%、最低は小売業2.45%

 産業別の外国法人等比率は、最高が電気・ガス業の13.39%(前年度14.51%)で、2012年度よりトップとなっている。以下、金融・保険業10.10%(同10.80%)、水産・農林・鉱業9.09%(同9.64%)、製造業8.22%(同7.89%)、建設業5.48%(同5.34%)で、10.0%以上は前年度に引き続き電気・ガス業と金融・保険業の2産業だった。
 外国法人等比率が最も高かった電気・ガス業(25社)のうち、前年度と比較可能な24社では、外国法人等の保有比率が上昇したのは、東京電力ホールディングス(24.20→27.22%)、メタウォーター(19.58→21.70%)、北海道電力(12.17→14.08%)など9社。
 一方、保有比率が低下したのは東北電力(21.31→13.41%)、中国電力(14.91→8.60%)、静岡ガス(16.12→9.99%)など15社だった。
 業種別で、最も外国法人等比率が上昇したのは製造業で、前年度比0.33ポイント上昇(7.89→8.22%)。次いで、運輸・情報通信業の同0.29ポイント上昇(4.67→4.96%)、サービス業の同0.15ポイント上昇(3.45→3.60%)の順。低下は、電気・ガス業の同1.12ポイント低下(14.51→13.39%)が最大。
 外国法人等比率が高い電気・ガス業、金融・保険業は、株価の値動きが小さく、リスク分散としてポートフォリオに組み込まれやすい。ただ、電気・ガス業では「カーボンニュートラル」の実現に向けた動向なども、今後の投資判断の一つになってきそうだ。
 また、保有比率の上昇が最も高かった製造業は、グローバル展開で知名度がある企業が多く、業務提携や資本提携などで保有比率が高くなる可能性もある。
 一方、小売業は内需中心の事業活動が主体で、外国法人等比率は元々低い。

上場企業外国法人等保有比率

市場別 最高は東証プライムの13.68%

 市場別では、最高が東証プライムの13.68%(前年度13.62%)だった。4年ぶりに外国法人等比率は上昇するも、コロナ禍の2020年度以降は14.0%を下回っている。
 以下、名証プレミア7.10%(同7.84%)、東証グロース3.38%(同2.43%)、東証スタンダード1.92%(同1.96%)、名証ネクスト1.21%(同1.62%)の順。
 最低はプロ向け市場の東証PROの0.00%(同0.00%)。
 東証プライムは、グローバル展開する大手企業が多く、国内だけでなく、海外からの投資対象にもなりやすい。一方、札証、札証アンビシャス、名証メイン、福証、Q-Boardなどは保有比率が1.0%未満となっている。地方上場は地場の中堅企業も多く、取引量が少なく、株価の変動も小さいこともあって、外国法人等の投資対象になりにくいようだ。

上場企業外国法人等保有比率

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