プレーオフ初戦は、エリック・ジョーンズが2014年以来初の“非”選抜者勝利を記録/NASCAR第27戦

 2022年NASCARカップシリーズのプレーオフ第1ラウンド開幕戦として、9月2~4日に争われた第27戦『Cook Out Southern 500』は、やはり紆余曲折のドラマを経て伏兵エリック・ジョーンズ(ペティGMSモータースポーツ/シボレー・カマロ)が今季初優勝を達成。ジョーンズにとってはカップ通算3勝目、そしてシーズン前に組織再編成を経たペティGMSモータースポーツにとっては初勝利となっただけでなく、NASCARが2014年にこのエリミネーション・フォーマットを導入して以降、ポストシーズン初戦で優勝した最初の“非プレーオフ”ドライバーとなった。

 都合15人のウイナーが誕生した白熱のシーズンを経て、南カリフォルニアのダーリントン・レースウェイで迎えたプレーオフ初戦は、レギュラーシリーズ首位のチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が序盤戦でクラッシュを喫して早々に戦列を去り、終盤にはレースを支配したトヨタ勢の相次ぐ脱落や車両火災も発生するなど、今季導入の新車両規定“Next-Gen”初のプレーオフは波乱続発の展開となった。

 週末幕開けのプラクティスは、前戦の3位で自身初のプレーオフ進出権を獲得したオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が最速をマークし、続く予選は僚友ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)がポールウイナーに輝くなど、チーム・ペンスキーが好調さをみせつける。

 グリーンフラッグのオープニングラップから、週末に向けた車検で3回連続の検査不合格となったダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)がピットスルー・ペナルティを消化するなか、ポールシッターのロガーノはフロントロウに並んだクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)とともに順調にラップを重ねていく。

 しかしそのロガーノが75周目にタイヤ交換に手間取りタイムを失うと、ポジションを引き継いだウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)がステージ1を制する。するとその直前、僚友エリオットがターン2でスピンを喫し、チェイス・ブリスコ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)を巻き添えに右リヤサスペンションを破損してしまう。

予選からジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)がポールウイナーに輝くなど、チーム・ペンスキーが好調さを見せつける
ピット作業で手間取ったロガーノだが、ステージ2も含めて挽回を見せ、最終的に4位までカムバック。プレーオフ順位表のトップに躍り出た
スピンからウォールにヒットし、チェイス・ブリスコ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)に激突されたチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)は、ランク9位に後退する

■ファイナルステージではハーヴィックのマシンが炎上する事態に

 なんとかピットロードにマシンを進めたシリーズリーダーだったが、9号車カマロZL1はトーリンクと上下のコントロールアームが壊れていたため、今季より10分間に拡大されたステージ間の修復作業時間も使い果たし、残念ながらここでリタイアが決定した。

「見てのとおりターン1と2に掛けてコントロールを失い、ウォールにヒットした。右リヤで何かを壊してしまったようで、ステージ2への復帰は絶望的になった。次戦は今週末より確実に良いだろうさ」と、これでプレーオフ・ランキング9位に後退したエリオット。

 続くステージ2は前戦同様トヨタ陣営が制圧する展開となり、カイル・ブッシュ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)とマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が1-2でステージ勝利を飾る。

 その2台とロガーノを交えて始まったファイナルステージでは、今度は2014年チャンピオンのケビン・ハーヴィック(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)が275周目に炎上。悲運に襲われた4号車はエンジン右サイドから炎を上げてすぐさまエプロンに停車する事態に。

 勢いを増す炎が車体両サイドに燃え広がる危険な状況となるも、ハーヴィックが自力で脱出した後に迅速な消火活動が行われ事なきを得たが、新規定車両で火災頻発の事態を重く見たNASCARは「容認できない状況であり、火災を引き起こした可能性のある兆候を探している」と、レース後にも本格的な原因究明と対策へ乗り出すことをアナウンスした。

 こうしたエンジンにまつわる不具合は勝利を目前にしたトヨタ・カムリにも襲い掛かり、首位を行くトゥルーエクスJr.の19号車は残り35周を切ったところで、ウォーターポンプのベルトを失ってペースダウン。最終的にオーバーヒートでレースを終えることに。

 そして残り32周で僚友の無念を引き継いだカイル・ブッシュの18号車も、この日最多となる155周のリードラップを重ねていたものの、チェッカーまで28周時点でバルブトレーンの故障に見舞われ、イエローコーション中に白煙を上げてストップする事態となってしまう。

275周目に炎上したケビン・ハーヴィック(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)だが、事なきを得た
カイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)も、79周目にエンジンの異変を察知して緊急ピットへ。この判断が功を奏し、12位完走を果たす
48周のリードラップを刻んだマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)は、ウォーターポンプのベルトを失ってリタイアに

■「チームクルー全員を誇りに思う」と勝者ハムリン

 そんな波乱含みのなか、残り20周でチャンスを得たのがジョーンズで、かつてのチームメイトでもあるデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)を従えトップチェッカー。プレーオフ突入後に今季初勝利を手にすることとなった。

「リチャード(・ペティ代表)は、おそらくここで最後に優勝して以来、ダーリントンのビクトリーレーンに行くのは初めてだろうね!」と、1967年の『Southern 500』制覇を引き合いに、NASCAR殿堂入りドライバーである現代表リチャード・ペティが重ねてきた43号車での勝利を“200”の大台に載せるという大役も果たしたジョーンズ。

「チームのクルー全員を誇りに思うよ。僕らは1年を通じてとても仲が良かったし、まさか今日がその日になるとは思ってもみなかった。勝つのは難しいだろうと分かってはいたが、これ以上にふさわしい場所はないね。このトラックが大好きだし、このレースが大好きだ。ここで2回も勝てるなんて本当にクールだ!」と、2019年のジョー・ギブス・レーシング時代にここで勝利を収めながらも、クリストファー・ベルにシートを譲るかたちでチームを去っていたジョーンズ。

「つまり、僕はそれによって自分自身への信念を失うことはなかった、ということさ。勝てると知っていたし、再び勝つにはプログラムを適切に成長させる必要があることを知っていたんだ。(チーフクルーの)デイブ・エレンツにとってもこれがカップ初勝利だ、彼にとっても本当にクールな出来事だし、僕らはこの日について長い間話し合ってきた。これが初めて僕らの仕事を救ったレースだと感じているよ」

 2位ハムリンに続き、3位にレディックが入り、ポールウイナーの4位ロガーノがプレーオフ順位表のトップに躍り出た2022年カップシリーズ。続く第28戦『Hollywood Casino 400』は、9月9~11日にカンザスの1.5マイル“トライ・オーバル”で争われる。

同じくエンジントラブルのカイル・ブッシュ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)も、貴重なポイントを失う
現代表リチャード・ペティが重ねてきた43号車での勝利を”200″の大台に載せるという大役も果たしたエリック・ジョーンズ(ペティGMSモータースポーツ/シボレー・カマロ)
併催のエクスフィニティ・シリーズ第24戦は、シェルドン・クリードとカイル・ラーソンの最終周アクシデントにより、ノア・グラグソン(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)が制している

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