宮城・南三陸町のワイナリーでのインターンシップが人気 被災地ににぎわいを

宮城県南三陸町のワイナリーで行われている職業体験、インターンシップが大学生の人気を集めています。若者たちを受け入れるワイナリー代表の男性の思いを取材しました。

「きょうから5日間、インターンシップ開催しますので、よろしくお願いいたします」
志津川湾を臨む、南三陸ワイナリー。3年前から、大学生のインターンシップを受け入れています。今回、参加したのは岩手県や長野県などから訪れた大学生7人です。
長野県の大学生「このインターンで学びたいことは、南三陸ワイナリーさんが地域のなかでどういう役割を果たしているのか、どういうふうに地域の中に馴染んでいったのかっていうようなことを知りたい」
岩手県の大学生「商品開発とかラベルのデザインとか広報活動とかが、個人的にはすごく気になってます」

ワイナリーの代表を務める佐々木道彦さん。佐々木さんが、ワイナリーに関わるきっかけになったのが東日本大震災です。静岡県の楽器メーカーに勤めていた佐々木さんは、ボランティアで何度も被災地に足を運びました。その中で感じたのは、復興が進んでもまちの活気は戻らないということでした。
南三陸ワイナリー代表佐々木道彦さん「がれきは無くなってきれいにはなっていくんですけれども、人とかにぎわいとかは戻っていないんですよね。そうしたときに、新しいものを何か始めていかなければいけないということをすごい感じて」

ワイナリーでインターンシップ

佐々木さんは、更に復興に貢献したいと楽器メーカーを辞めて宮城県に移住。ワイングラスなどを作る会社で働いている時に、ワインの魅力に気づきます。
南三陸ワイナリー代表佐々木道彦さん「いろんなグラスを作っていて、びっくりしたのが、ワイングラスだけが必ずペアで買われるんですよね。(ワインは)必ずペアで誰かと食事を楽しみながら楽しむお酒ということを強く感じて。食と食。人と人。人と地域のつながりを作り続けることで、南三陸町で新しいにぎわいをつくりたいという思いで、このワイナリーを2019年2月に設立しました」

佐々木さんの話を聞いた後、学生たちはワイナリーのレストランで提供される羊を飼育する牧場へ向かいました。
「さあ、これはなんでしょう。ノリですね」
「ワカメとか混ぜると、以前より食いつきがいいとかあるんですか?」

この牧場の羊は、地元産のワカメやノリなどを餌にしているため、羊特有の臭みがありません。
牧場を経営する金藤克也さんも、震災後、南三陸町に移り住んできました。今では互いに力を合わせ地域で頑張っています。
南三陸ワイナリー代表佐々木道彦さん「ワイナリーが単独でやっているのではなくて、いろんな方と一緒に南三陸を盛り上げようとしているっていうことを知ってもらいたいなと思っています」

ワインの仕込みを学ぶ

インターンシップ2日目。この日はワインの仕込みを学びます。最初の工程は、ブドウの実を枝から取り外す作業です。3トンのブドウを次々に機械に投入していきます。ワイナリーならではのちょっとしたご褒美も。
学生「今まで(ワイナリーに来たことは)全く無くて、見学とかもなかなかしたことがなかったので、初めて中を見て作業を手伝わせてもらってとても興奮していますね」

宮城県外出身の学生たちは期間中、地元の宿泊施設に滞在しています。夜には、ワインを片手に震災についても語り合いました。
「(震災後)町の作り自体が変わったんだなって感じましたね。家を建てないっていうか、そういうのを感じた」
「福島沿岸部物々しい」「物々しいよな」
「除染した土とか運んでるトラックが、延々と高速道路並んでたりするとこれやばいなって」
「まだトラックいるんですね」

ブドウ畑で摘み取り

最終日は、山形県上山市にある南三陸ワイナリーのブドウ畑で、草むしりとブドウの摘み取りです。
日差しの強い中長時間の作業で体力が必要ですが、ワインが出荷される日を思い丁寧に摘み取っていきます。

プログラムを終えた学生たち。この5日間で様々なことを学べたと話します。
長野県の大学生「いろんな飲食店にお邪魔していく中で、ワイナリーさんの商品を置いていたりだとか、佐々木さんのお話を店員さんにしていただいたりだとか、佐々木さんの地域との関わり方を学ぶことができたと思う。こうして地域で働く人の姿をたくさん見て、仕事にしても住むにしても田舎に住むのもいいのかなって、考えががらっと変わりました」

復興にもつながる取り組み

佐々木さんは、学生たちの変化を見てこうした体験がいつか南三陸町の復興にもつながるのではないかと期待しています。
南三陸ワイナリー佐々木道彦社長「いろんな選択肢の一つとして、地方で生産者と一緒ににぎわいをつくる楽しみもあるんだなと知ってもらえればなと思いますし、将来、そういった地域を盛り上げる活動に取り組む人が何人か出てくればうれしいなと思います」

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