「短期的メリットを見出すのは難しいが…」中部横断道 静岡⇔山梨開通から1年も…“効果”がみえない理由【現場から、】

中部横断道の静岡県と山梨県の間が全線開通してから1年が経ちました。観光振興や物流拡大に大きな期待がかけられていましたが、どうやら、あまり効果が見えていないのが現状のようです。

<松木翼記者>

「中部横断道増穂ICからすぐ近くのところにある道の駅富士川に来ています。こちらの駐車場、平日にも関わらずい多くの車で埋まっています」

中部横断道新清水JCTから1時間のところにある山梨県の「道の駅富士川」。駐車場には静岡ナンバーや浜松ナンバーの車が目立ちます。

<静岡市からの観光客>

「毎年長野に家族旅行をするので中部横断道で大幅に所要時間が短縮されてとても便利になった」

<愛知県豊橋市からの観光客>

「やっぱりシャインマスカットとトマト」

「静岡から甲府へ抜ける高速道路が今までなかったので(便利)」

この道の駅では、中部横断道全線開通から1年間の売り上げが、その前の1年間と比べて25%もアップ。2021年度はコロナ前よりも客が増え、過去最高の売り上げを記録しました。

2022年4月にはバウムクーヘン専門店もオープンさせるなど、中部横断道を追い風に売り上げ拡大を狙います。

<道の駅富士川 居村一彦社長>

「特に静岡県のお客様が増えている。コロナ禍の後も立ち寄ってもらえるように道の駅の魅力を高めていきたい」

一方、同じ日に、静岡市のエスパルスドリームプラザを覗いてみると…山梨ナンバーは3台だけでした。

<エスパルスドリームプラザ 村上直矢部長>

「実感としてはそれほど目に見えて(観光客が)増えた感触はない。この先コロナが明けたらもっと動きが加速するのではないかと思っている」

中部横断道にちなんだイベントなどは実施しているものの、山梨県民への直接的なPRが不足しているといいます。

<エスパルスドリームプラザ 村上直矢部長>

「海のものとか山梨にないものはたくさんあるので、もっとアピールできればと思っている」

なぜ、山梨に比べて、静岡の観光への効果は薄いのでしょうか。

<静岡経済研究所 玉置実主席研究員>

「そもそも山梨県と静岡県のマーケット規模、人口規模が違うところが最大の理由」

静岡県の人口360万人に対して、山梨県は80万人。山梨にとって静岡は魅力あるマーケットですが、静岡にとっての山梨は東京圏や愛知県と比べて見劣りするため、PRに本腰を入れていないのです。

専門家は、富士山を軸とした静岡・山梨の連携ツアーを長野や首都圏に売り込むなど、「マーケットを山梨県単体で捉えない戦略」も必要だと指摘します。

<静岡経済研究所 玉置実主席研究員>

「静岡県が(中部横断道の)短期的なメリットを見出すのはなかなか難しい。だったら中長期的に考えて何ができるか。せっかく中部横断道ができたのでそれをどう生かすかを官民あわせて戦略的に考えていくことが必要」

中部横断道を生かした「物流の拡大」も課題です。9月5日始まったのは、山梨産のシャインマスカットを清水港からタイへと海上輸送する取り組みです。静岡県内の農作物は冬が旬のものが多いため、山梨の農産物で夏の輸出量を増やす狙いがあります。

<静岡県産業革新局マーケティング課 加藤哲司主任>

「もともと農水産物は東京や横浜など大きな港から輸出されることが多かったので、その流れを清水港にもっていきたい」

観光、物流ともにまだ効果が見えない中部横断道ですが、活用への模索が続いています。

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