富士の麓の街がいま、サルに振り回されています。静岡県富士市でニホンザル捕獲用の麻酔銃を誤って発射し、女性に矢が当たる事故が起きてから1週間あまり。麻酔銃を使った捕獲が中断する中、市役所には連日サルの出没情報が寄せられるなど、住民の不安は募るばかりです。いったい、いつになれば再開できるのか、行政に聞きました。
「サルの麻酔銃による捕獲作業におきまして、市の委託事業者による人身事故が発生してしまいました。本当にこのようなことはあってはならないことで、大変遺憾に思うとともに、改めて被害に遭われた方には心からお詫びを申し上げる次第であります」
9月7日、富士市役所で行われた富士市長定例会見、小長井義正市長は“前代未聞の事故”について、あらためて謝罪しました。
まさかの事故が起こったのは、8月29日のことでした。静岡県富士市中之郷のJR富士川駅近くで、出没したニホンザルを捕獲しようとした市の委託業者が麻酔銃を誤って発射し、目撃情報を伝えるため近くにいた女性の左肩に矢が刺さりました。
女性は病院に運ばれましたが、一時意識を失います。その後回復したものの、現在も体調がすぐれず、通院しているということです。
これに困ったのが住民です。事故後、捕獲作業が中断したままなのです。
富士市環境部環境保全課の鈴木宏昌課長は「事故後も毎日、サルの目撃情報がある。住宅地にサルが出没しているという状況。また、地元の方々からも早期に捕獲してもらいたいという強い要望も受けている」とこう現状を語り、「十分な安全管理のもと、麻酔銃による捕獲などを実施する」と今後の捕獲作業の進め方について明らかにしました。
富士市では「箱わな」による捕獲を続けているほか、別の方法による捕獲は可能かどうかも検討していますが、出没地域が住宅地ということもあり、いまのところ、麻酔銃による作業を再開したい考えです。また、今回事故を起こした業者とは、別の業者に業務を委託する方針です。
さらに麻酔銃を使う際の方法の見直しも検討しています。市では再開にあたり、捕獲作業にあたる職員の数を増やして、役割分担を明確化するほか、麻酔銃を扱う委託業者は必ず2人以上が作業するということです。
市によると、目撃情報のあるサルは2匹いて、そのうち、1匹は凶暴な性格だということです。この周辺ではサルに追いかけられたり、車が傷つけられる被害が相次いでいることから、登下校時の児童の安全を確保するため、市の職員がサルが捕獲されるまで、通学路でパトロールを続ける予定だということです。