初のWEC富士を迎えるプジョー9X8「パフォーマンスは“正しい水準”にある」

 WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦するプジョーは、今週末に控えた第5戦富士6時間レースにおいて、「すべてのセッションを最大活用する」ことを目標に置いている。

 7月の第4戦モンツァ6時間レースにおいて、ハイブリッドシステムを搭載する“リヤウイングレス”の革新的な『9X8』をデビューさせたプジョー。富士スピードウェイでの一戦は、彼らにとって2戦目のレースとなる。

 9X8にとって初のトラックとなる富士スピードウェイにおけるプジョーの目標は、コースに適応するために、利用できるセッションタイムを最大限に生かすことである、とテクニカルディレクターのオリビエ・ジャンソニーは述べている。

 モンツァでは93号車が予選でストップしてタイムを出せずに最後尾に沈むなどした彼らは、さまざまな問題を経験しながら「多くを学んだ」という。モンツァでは、94号車のみが完走を果たしている。

 94号車はデブリによるオーバーヒート、93号車はターボなど、それぞれに異なる問題を解決するため、ピットガレージで長い時間を過ごすこととなっていた。

 プジョーはモンツァでのハイパーカーデビュー以来、これら問題に対処するために2回のテストを行った。レースカーはフランスで準備され、富士のレースに向けて空輸された。

「日本では初めてのサーキットを体験することになるため、金曜の朝から日曜日の午後まで、すべてのサーキット・セッションを最大限に活用する必要がある」とジャンソニーは述べている。

「モンツァでは、クルマとチームについて多くの情報を収集することができた。我々はそれまでのテストでは発生しなかった問題に直面し、そのうちのいくつかは現場で修正することができたし、他のものについてはモンツァ以降も継続して取り組んでいる。これは、モータースポーツにおける(通常の)試行錯誤のプロセスだ」

「現段階では、我々はレースの戦略よりも信頼性と性能の向上に集中している。このような新しいプロジェクトにおいては、この分野で10年以上の経験を持つライバルに立ち向かうことは、ごく当たり前のことだ」

「チーム・プジョー・トタルエナジーズでは全員が激しい競争を繰り広げており、マシンもチームも大きな改善の余地があることを認識しているが、解決できない問題にはまだ出くわしていない。したがって、とてもポジティブだ」

■「アドレナリンが出続けている」とベルニュ

 ポール・ディ・レスタ、ミケル・イェンセンとともに93号車をドライブするジャン・エリック・ベルニュは、WECの初期の活動は主に車両の信頼性の限界を探るものであったが、プジョーのパフォーマンスは「正しい水準」にあると信じている。

「モンツァではもっといいレースができたはずだが、このような野心的なプロジェクトの初期段階においては、それ(トラブル)はまったくもって予想されたものでもあった」とベルニュ。

「レースではマシンに問題が出て、リタイアにつながった。だけど、フリー走行ではトヨタに迫る走りを見せ、この型破りなクルマが正しい位置にあることを証明できた。そう確信しているよ」

「初戦は、このエキサイティングな旅におけるもうひとつの重要なマイルストーンだった。富士に向けては、ゴールポスト(目標)は再び位置を変えている。でも、そのおかげでアドレナリンが出続けているんだ!」

 ロイック・デュバル、ジェームス・ロシターとともに94号車をドライブするグスタボ・メネゼスは、プジョーがモンツァ6時間レースで「大きな自信」を得たと付け加える。

「このクルマがポテンシャルを秘めていることがよく分かった」とメネゼスは言う。

「もちろん、まだ改善しなければならない点はたくさんあるけど、僕らは皆、この先の挑戦に向けてモチベーションを高めている」

「モンツァでは、ドライバーとしてもとても勉強になった。プジョー9X8がトラフィックや他のハイパーカーに対してどのような挙動を示すのかを確認することができたしね。テストでは単独走行が多かったので、その点では新たな一歩となった」

「富士においても、自分たちのクルマ、自分たちのチーム、自分たちの仕事に集中し、その先にあるものを見極めるという戦略は変わらない」

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