小4死亡、未解決…捜査中の元警官、捜査書類を破棄 二審も有罪 母「反省なく保身ばかりで納得できない」

元警部補の控訴を棄却

 埼玉県熊谷市で2009年に発生した小学4年の小関孝徳君=当時(10)=が死亡した未解決のひき逃げ事件で、県警が紛失した孝徳君の腕時計に関する捜査書類を細断破棄したとして、公文書毀棄(きき)罪の罪に問われた県警交通捜査課の元警部補、須郷宗男被告(64)の控訴審判決公判が7日、東京高裁で開かれた。伊藤雅人裁判長は「自白調書に十分な信用性が認められるとした原判決の判断に誤りはない」などとして、被告側の控訴を棄却。懲役1年6月、執行猶予3年の一審さいたま地裁判決を支持した。

 伊藤裁判長は判決理由で、今回の事件は事情聴取で被告が書類をシュレッダーで細断したと申告したことを契機に発覚したと説明。聴取官が申告を強要したとは考えられない上、被告が警察官であることを踏まえると「黙秘権の告知がされてないからといって、その後の自白の任意性を否定すべき理由はない」とした。

 また、腕時計の紛失発覚を免れるために、10点の書類の手続きを行い、保管する証拠品と矛盾がないようにしたとして「存在してはならない書類を破棄したというのは自然かつ合理的」と強調。弁護側が主張していた「任意性が認められない自白調書を証拠採用した手続きの違反」「書類を毀棄した事実誤認」の2点をいずれも退けた。

 判決によると、須郷被告は県警交通捜査課の警察官として、孝徳君の事件を発生当初から担当。証拠品として押収していた腕時計の紛失の発覚を免れるため、15年9月、証拠品11点に関する書類2通をシュレッダーで細断した。

 高裁判決を受け、取材に応じた孝徳君の母親は「一審通りの判決がそのまま認められての有罪と受け止めた」としつつも「一審から被告は自分の保身に走る証言ばかり。腕時計を紛失し、書類を差し替えて、破棄したことへの反省のなさを含め、全てに納得はしていない」と述べた。

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