「南」島原産そうめん、PRに力 “話題のCM”などでブランド力向上へ

奇抜なCMと話題を呼んだ「マイメン、いつメン、島原手延べ素麺」(市提供)

 長崎県南島原市が育んだ特産といえば「島原手延べそうめん」だが、島原半島外、特に県外では産地が「島原市」と誤解されることは珍しくない。テレビやネットニュースでも、産地紹介の風景で島原城やコイが泳ぐ水路などが使われるケースがまれにある。「南」島原産をPRしようと、市商工振興課そうめん振興班を中心に知恵を絞っている。
 島原手延べそうめんは、約400年の歴史を誇る。つるっとすすれば舌触り滑らかで、強いコシと粘りのある食べ応えが特徴。地元生産者が高品質でおいしいそうめんづくりに情熱を傾け、日本有数のそうめんの名産品として知られるようになった。
 手延べそうめんの生産者数を両市に確認すると、南島原市が約240、島原市が2と圧倒的な違いが分かる。それでも、島原市商工振興課は「市外の方から『島原手延べそうめんが食べたいので、おいしい生産者を知らせてほしい』とのお電話がある」と話す。
 関係者によると、過去には世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の一つ、原城跡(南島原市南有馬町)にちなんだ「原城そうめん」「南島原手延べそうめん」などの話もあったが、立ち消えになったという。
 南島原市商工振興課そうめん振興班は「市発足(2006年)前からある伝統産業だけに、“南”と記載することは、消費者に混乱を招き、これまで培われた伝統や信頼が損なわれる可能性もある。今のところ、商談などで困ったこともない」と言う。地元生産者も「名(南島原)より実利。そもそも組合が市内で10以上あり、まとまるはずがない」と一笑に付した。
 ただ、伝統産業の衰退は課題だ。昨今の原材料費や人件費、輸送費などの高騰を受け、全国的に手延べそうめんの生産は限界に近い状況にある。さらに少子高齢化に伴う後継者不足に加え、食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」の義務化などもあり、生産者の設備投資や衛生管理面のコストも上がっている。

全国2位の生産量を誇る南島原市の特産品「島原手延べそうめん」(市提供)

 生産量は揖保乃糸(兵庫県たつの市)に次ぐ全国2位の1万2千トン(21年度概算)を誇るが、1978年に約450あった生産者は約240に減少している=同振興班調べ=。
 危機感を抱いた南島原市は、ブランド力の向上や生産者の所得向上など足腰の強い産業にするため、2018年10月に専門部署の「同振興班」(3人)を新設。▽首都圏や福岡市など都市部でのPR事業▽HACCPの導入支援▽後継者、担い手不足の対策-などに力を入れている。

南島原市の認証マーク

 象徴的なのが、19年に制作発表した独自CM「マイメン、いつメン、島原手延べ素麺(そうめん)」だ。「一度聞いたら忘れない」「品がない」と賛否両論があったが、ビートの効いた音楽に乗って、3人の「素麺エンジェルズ」がそうめんを食べ、歌い踊る。常識を打ち破ったCMと話題を呼んだ。
 派手なCMに目を奪われがちだが、7月7日の「そうめんの日」には小中学校にそうめん給食を提供。そうめんのアレンジを学ぶ料理教室などコロナ禍での地道な活動にも取り組んでいる。
 同振興班は「市が定める基準に合格した島原手延そうめん認証制度も導入済み。認証マークは、厳格な基準をクリアし品質を満たした安心と信頼の証し。自信をもってお薦めできる商品となっているので、認証マークを目印にしてご購入ください」と消費者に呼びかけている。


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