立体で見る「被爆前後の長崎」 遺構CGで再現 長崎大教授らウェブで公開

長崎原爆投下後の航空写真を重ねたデジタル立体地図や、CGで再現した旧鎮西学院中の被爆校舎を指す全教授=長崎市文教町、長崎大文教キャンパス 

 長崎大情報データ科学部の全炳徳(チョンビョンドク)教授が、原爆で壊滅する前後の長崎市街地を“上空”から閲覧できるデジタル立体地図を、ウェブ上で公開している。米軍が原爆投下の前後に撮影した航空写真を地図ソフトに重ね、一部の被爆遺構もコンピューターグラフィックス(CG)で再現。将来的には被爆者の証言や映像なども地図上に加え、平和教育の教材として活用する考えだ。
 航空写真は原爆投下2日前の1945年8月7日、その1カ月後の9月7日にそれぞれ米軍が撮影。全教授は、情報通信技術(ICT)を活用して爆心地周辺の立体映像化などに長年取り組んでおり、航空写真は米国立公文書館(NARA)から昨年入手した。
 活用した地図ソフトは、ウェブ上で無料公開されている「Re:Earth」(リアース)で、地図上に画像データなどを追加することができる。地図に重ねた航空写真の範囲は、被爆前が南北約13キロ、東西約9キロ。被爆後は南北約11キロ、東西約5キロで、建物が倒壊し焼け野原となった爆心地周辺をさまざまな角度から俯瞰(ふかん)したり、被爆前の様子と見比べたりすることができる。

被爆後の航空写真を重ね合わせた爆心地周辺のデジタル立体地図。右手前がCGで再現した旧長崎医科大付属医院。左側に浦上川が流れている

 被爆遺構のCG化は、主に同大4年の青木晴喜さん(22)が担当。爆心地から1キロ以内にあった旧長崎医科大付属医院や旧城山国民学校、旧鎮西学院中などを立体的に再現している。
 全教授は今後、被爆者が原爆に遭った場所や避難ルート、証言映像などを地図に加えることも検討。「被爆者のストーリーを地図に示すことで、より効果的に伝えることができる。オンライン上の地図なので国内外の学校などからもアクセスすることもできる」と意義を強調する。
 同大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)が、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館から受託している「被爆の実相の伝承のオンライン化・デジタル化事業」(2021~23年度)の一環。全教授らが作成している立体地図は、リアースのサイト(https://nagasaki-genbaku.reearth.io)で閲覧できる。


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