記録的な値上げラッシュ…強化すべきフードパントリー、今後さらに困窮家庭が増加 食品廃棄せず寄付を

2カ月に1度、食料品を配布するフードパントリー。ひとり親家庭などの地域住民が訪れた=9月初旬、川口市

 ロシアのウクライナ侵攻や円安などを要因に国内で深刻化している物価の上昇。埼玉県内でも一部企業や消費者が経済的に圧迫され、困窮家庭や福祉団体などに食料品を提供するフードバンクやフードパントリーは体制の強化が急務になっている。関係者らは需要の高まりを感じつつ「活動をもっと知ってもらい、不要な食料品があれば寄付してほしい」と呼びかけている。

 9月初旬の日曜日、川口市にあるフードパントリーには多くの人が訪れた。パントリーでは、付近に住むひとり親家庭やコロナ禍などの影響で失職した生活困窮者を対象に2カ月に1度のペースでコメやレトルト食品、即席麺などを配っており、この日も約50に上る家庭が食料品を受け取った。

 市内に住み、保育園から中学生までの子ども4人を育てる30代の女性もそのうちの1人。「物価の上昇は家計に直接響く。今年に入ってから月を追うごとに苦しくなっている」とため息をついた。8月の食費は1月と比較して体感で3割ほど高くなったという。平日は事務としてフルタイムで働きながら子どもを送迎し、その他の家事を全て1人で担っている。料理に割く時間もできるだけ短くしたいが、インスタントやレトルト食品は割高で手を出しづらく「パントリーの支援によって、毎日とは言えないが楽をできる日がある。とても助かっている」と話した。

 帝国データバンクが今月1日に発表した「『食品主要105社』価格改定動向調査」によると、上場する主要飲食料品メーカー105社の今年以降の価格改定計画(実施済み含む)を調査したところ、加工食品や調味料などを中心に8月末時点で累計2万56品目で値上げが判明した。

 うち来月には6500品目を超える食品が値上げの予定で、帝国データバンクは「記録的な値上げラッシュになる」と予想する。フードパントリーなどに多く寄せられるカップ麺やレトルト食品などの加工食品の平均値上げ率は16%で、五つある食料品の分野で最も高い値上げ率だった。

 パントリーの運営団体代表の男性によると、川口市のエリアでは昨年まで五つのパントリーで支援していたが、今年に入ってから新たに二つ増えたという。支援する家庭数も昨年から20ほど増加し、250家庭になった。男性は「今後さらに支援が必要になる家庭が増えることを見越して、支援体制を拡大していきたい」と話す。

 フードバンクなどから食品を一括して受け入れ、県内各地域のフードパントリーなどに分配しているNPO法人「埼玉フードパントリーネットワーク」(越谷市)理事長の草場澄江さんも深刻な物価高で困窮した家庭などから「ニーズの高まりを感じている」と話す。

 ネットワークに加盟しているパントリーは昨年6月時点で52団体だったが、先月には県内31市町で71団体にまで増加した。団体が増えればそれだけ必要な食料品も増えるため、草場さんは「潜在化している廃棄食品は依然として多いはず。食品ロスを減らすという観点でもこれまで以上の支援をお願いしたい」と呼びかけている。

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