「光丸うすい」の栽培技術確立へ 有力品種として期待

草丈が短いことで作業の効率化が期待できる「光丸うすい」(左側)。右側は「きしゅううすい」=和歌山県みなべ町で

 和歌山県日高地方で栽培が盛んなエンドウの有力品種として期待される「光丸(みつまる)うすい」について、栽培技術などの研究を続けている県農業試験場暖地園芸センター(御坊市塩屋町)は7日、これまでの成果を紹介するための会合を同センターで開いた。エンドウの生産農家から「収穫作業が楽になる」と期待する声があり、栽培技術の確立に向けて意欲を見せた。

 「光丸うすい」は、エンドウの主力品種「きしゅううすい」の変異個体で、「きしゅううすい」よりも節間が短く、草丈も短いのが特徴。そのため収穫の際、脚立を使わなくて済むなど、作業が楽になるといった優位性がある。

 一方で、開花時季が遅いために市場価格が高いシーズン初期の収穫量が少ないことや、温度が低いと秀品率が下がるといった栽培面での課題がある。

 このため暖地園芸センターは2020年度から3年計画で、課題を解消するための栽培技術確立を目指している。変異個体を見つけたみなべ町東本庄の大野光男さん(68)ら、御坊・日高の13農家が「光丸うすい」を試験栽培している。

 会合には、試験栽培する農家やJA紀州、県の関係者ら計35人が参加した。

 初めにセンター研究員の宮前治加さんが研究成果について報告。初期の収穫量を増やすためには「きしゅううすい」より早く種をまき、種は気温が低い時季に取ったものを使い、開花を早めるために電照時間を長くすることをポイントとして挙げた。寒い時季の秀品率を高めるポイントとしては「きしゅううすい」より植える位置の間隔を空け、茎の折り返しは1回にとどめ、日中の温度を高めにすることを挙げた。特性に応じた栽培が必要なことを示した。

 続いてJA紀州みなべ営農販売センター営農指導員の萩野翔大さんが、みなべ町などの園地で試験栽培した結果や栽培農家へのアンケート結果を報告。暖地園芸センターの報告と同様、収穫作業が楽な半面、収穫時季が遅くなったり、収穫量が減ったりすることが懸念されることを挙げた。

 試験栽培する農家も意見を発表。みなべ町気佐藤の前田信治さんは「収穫量は減るが、作業効率を考えれば光丸の方が良い。体力が衰えてくると脚立を使っての作業はしんどい」、同町山内の榎本智行さんも「女性も作業するので、楽になるのは良いこと。一部で導入できればと思う」と話した。

 暖地園芸センターは今後も、JAや農家と連携し総合的な研究で栽培技術の確立を目指す。「現場に定着するよう全力を尽くしたい」としている。

「光丸うすい」の栽培管理について説明を聞く農家やJA、県の関係者ら(7日、和歌山県御坊市塩屋町で)

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