中絶が禁止されていたフランス 望まぬ妊娠をしたアンヌの12週間を”体験” 「あのこと」公開決定

2021年のヴェネチア国際映画祭で、審査員の満場一致で最高賞である金獅子賞を受賞した映画「あのこと」が、12月2日より劇場公開されることが決まった。

「あのこと」は、1960年代の、法律で中絶が禁止されていたフランスを舞台に、望まぬ妊娠をした大学生のアンヌが、自らが願う未来をつかむために、たった一人で戦う12週間を描いた作品。貧しい労働者階級に生まれたが、飛びぬけた知性と努力で大学に進学し、未来を約束する学位にも手が届こうとしていたアンヌ。ところが、大切な試験を前に妊娠が発覚。狼狽するアンヌは、中絶は違法だった当時のフランスで、あらゆる解決策に挑む。全編がアンヌの目線で描かれ、見る者に没入感をもたらす作品となっている。

監督を務めるのは、女性監督のオードレイ・ディヴァン。主演は、子役時代に「ヴィオレッタ」で美しすぎる娘役を怪演し、本作でセザール賞を受賞したアナマリア・ヴァルトロメイ。原作は、アニー・エルノーが自身の実話を基に書き上げた「事件」。

公開されたポスターは、主人公のアンヌがこちらを強いまなざしで見据えるビジュアルで、中央におかれたひらがな4文字のタイトル「あのこと」は、4文字を2列に分けた意味深な配置となっている。また、「あなたは<彼女>を体験する。」のコピーが、本作が体験型の作品であることを訴えている。

あわせて解禁された予告編は、前途有望なアンヌの妊娠が発覚し、狼狽するシーンから始まる。「違法行為になる」と医者から突き放される様子や、「妊娠したら、大学を辞め働くしかない」「刑務所に入りたいの?」と話す友人の会話が、1960年代当時のアンヌを取り巻く社会を描き出す。しかし、アンヌの選択は一つ。未来のために命がけであらゆる方法を模索しながら、迫りくるタイムリミットの中で焦燥し、どんどん孤立し追い詰められていく様子が描かれる。全編にわたりアンヌに肉薄した映像から、本作の「体験型」と言われる一端が垣間見える。

【作品情報】
あのこと
2022年12月2日(金)Bunkamura ル・シネマ他 全国順次ロードショー
配給:ギャガ
© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINÉMA - WILD BUNCH - SRAB FILM

© 合同会社シングルライン