国葬是非 割れる長崎県民 功績大きい/費用に妥当性ない…「どうでもいい」政治不信も

 安倍晋三元首相の国葬を巡り、岸田文雄首相が国会で実施理由などを初めて説明した8日、長崎県民からは妥当性や16億円超の国費負担などを巡り賛否両方の意見が聞かれた。「一般市民が何を言っても変わらない。どうでもいい」などと政治不信もにじんだ。
 「賛成派」は安倍氏の功績を理由に挙げ、国葬費にも理解を示した。県立大佐世保校3年の中野恭輔さん(20)は日米同盟の強化など外交手腕を評価し「世界に大きな影響を与え、日本を支えた。日本全体として送り出すべき」と主張。国葬費については「安倍氏の功績を考えれば、かまわないのでは」と見る。長崎市三京町の専門学生、原口聖奈さん(20)も「総理として頑張ってくれたのは事実。感謝している人がいるのだから国葬にしてもよいと思う」と話した。
 「反対派」は、岸田首相の国会説明でも国葬費や実施理由への疑問が拭えなかった。南島原市有家町の自営業、末吉貴浩さん(61)は「費用も法的根拠も妥当性がない。コロナ禍や長引く景気の悪化で国民は苦しんでいる。税金は慎重かつ有効に使うべきだ」と首をかしげる。平戸市早福(はいふく)町の民宿経営、里崎雪さん(56)は「安倍氏銃撃事件を『民主主義の根幹を揺るがす許されない行為』と言うが、旧統一教会問題などで賛否が分かれる中、国葬を強行することこそが民主主義の根幹を揺るがす」と指摘した。
 一方、「どうせ一般市民が何を言っても変わらない。賛成も反対もない」と、冷ややかな視線を送るのは長崎市内に住む20代会社員女性。「他にも無駄なところで税金を使いまくっているのに、なぜ国葬だけ騒ぐのか分からない。どうでもいい」と政治への不信感を口にした。


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