障害者雇用後押し 横浜・都筑区に神奈川県内初の企業向け貸農園 屋内で野菜を水耕栽培

栽培している野菜の様子を見るバーノンさん=横浜市都筑区

 障害者が働く場として、民間企業に貸農園を提供しているエスプールプラス(東京都)が今夏、県内初となる拠点を横浜市都筑区にオープンした。大半の企業が法定雇用率を達成できていない現状を改善しようと、知的障害者らの特性と親和性が高いとされる農業に12年前から着目。全国に拠点を広げることで、多くの雇用創出を目指している。(佐藤 百合)

 2010年に設立した同社は現在、屋外型と屋内型を合わせて全国約30カ所に貸農園を展開。各企業に対して、就労意欲のある障害者を紹介し、採用されれば、実際に働く場として農園の一角を提供している。人材紹介料を初期費用、月々の農園利用料をランニングコストとして収益を上げている。

 上場企業から中小企業まで、業種もさまざまな400社以上が利用。各社に所属する計約2800人の障害者が野菜の栽培に取り組んでいる。収穫した野菜は社員や子ども食堂に提供。農園は、多様性への理解を深める社内研修にも使われているという。

 県内初の拠点となった「わーくはぴねす農園Plus横浜」(横浜市都筑区)は3階建て、延べ床面積約2600平方メートルの屋内型。障害の特性によっては、体温調節が苦手で屋外作業が難しい人もいるため、同社が独自に開発した水耕栽培装置を備えている。

 7月に開園式を実施し、現在は商社や建設業など12社の計99人が利用。企業ごとに区画が割り振られ、最大129人の一般就労が可能という。施設完成後の5月から働くバーノン・ダニー・隆司さん(45)は、「苗が出てきたときは感動する。野菜を育てるのは楽しい」と笑顔を見せる。

 同社が事業を続ける背景には、障害者就労が進まない現状がある。厚生労働省が昨年発表した集計によると、2.3%の法定雇用率を達成した民間企業は全体の47.0%にとどまる。就業者の大半は身体障害者で、知的・精神障害者の経済的な自立は課題となっている。

© 株式会社神奈川新聞社