葉山の4歳女児、米国で心臓移植成功し帰国 両親「奇跡としか言えない」と募金協力に感謝

心臓移植手術を終えた森木花ちゃん(中央)と父賢吾さん(左)、母理恵子さん=9日午前、県庁

 重い心臓病を患った葉山町の森木花ちゃん(4)が米国で心臓移植手術を受け、8月末に帰国した。術後の経過は良好といい、9日に会見した両親は「奇跡としか言いようがなく、皆さんに感謝しかない」と、臓器を提供したドナーや費用の工面に協力した人たちへの思いを口にした。

 「経過観察の途中だが拒否反応もなく、見違えたようになった。今までを取り戻すように毎日の生活に目を輝かせ、日に日にできることも増えている」。母親の理恵子さん(47)は、県庁の会見室でお絵かきを続ける木花ちゃんの横で目を細めた。

 木花ちゃんは1歳4カ月だった2019年6月、入院先で心臓の働きが低下する「拡張型心筋症」と診断を受けた。翌20年に国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)へ転院し、補助人工心臓を装着。ただ、心不全が悪化するなどし、早期の心臓移植を希望して両親が渡米を決意した。

 立ちふさがったのが、費用の壁だ。デポジット(前払い金)約2億5千万円のほか、チャーター機での渡航や滞在にかかわる経費を含めると多額の費用が必要となり、木花ちゃんの兄が通っていた幼稚園の保護者らが「きかちゃんを救う会」を結成。県内外の街頭で募金活動を続けて目標金額の約3億5千万円を集め、昨年11月に渡米した。

 心臓移植は脳死と判定された人から提供を受けることになる。父親の賢吾さん(42)は「複雑な思い。静かに待つしかなかった」と振り返る中、今年5月に米コロンビア大学病院で心臓移植手術を受け、7月に退院することができた。賢吾さんは「命をつないでくれたドナー様のご冥福を心よりお祈りするとともに、深い悲しみの中で決断された家族の皆さんに深く感謝したい」と声を詰まらせた。

 定期的な通院や服薬などは続けているが、3年2カ月ぶりに我が家に戻った木花ちゃん。会見では好きな遊びを質問され、「絵を描くの」と元気よく答えた。両親は「何よりも家族4人で過ごせることが大変幸せ。いただいた命を大切に守っていきたい」と話した。

 救う会では今後、会のホームページで会計報告などを行う。

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