“迷宮”が本との偶然の出会いを演出…JR敦賀駅西地区に出現した公設書店 福井県敦賀市のにぎわいエリア「otta」の魅力とは

「本との出会い」が楽しめる公設書店「ちえなみき」=福井県敦賀市鉄輪町1丁目

 迷宮のように入り組んだ本棚には小説や絵本、専門書にマンガ、少し古ぼけた古書や洋書もある。背表紙を向けて並べた本の前に横置きで本が積まれた場所も少なくない。半開きの引き出しに隠すように収められた本や、背伸びしないと届かない本もある。

 福井県敦賀市の公設書店「TSURUGA BOOKS&COMMONS ちえなみき」。一般書店や図書館に並ばない書籍を含めた3万冊をそろえる。

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 1階に広がる“本の迷宮”のコンセプトは「世界知」。「文化・生活」「歴史・社会」「生命・科学」の3ステージの下、「ようこそ、アート」や「戦争の記憶」「生きものの不思議」「旅する宇宙船地球号」など42テーマで選書された本がテーマに沿いつつもランダムに置かれ、連想ゲームのように次のテーマの本棚へといざなう。

 一風変わった書棚空間について副店長の依田賢一さん(29)は「知らないことに気付いたり、店内を回っているうちに興味が湧いてきたり。偶然『その本』に出会う仕掛けなんです」と話す。

 “本の迷宮”では、本棚に机やいすを組み込んだり、本棚と本棚の間のスペースにソファが置かれたりしている。オープンを控えた8月31日には、見学の親子連れが本棚の前で一緒に絵本を開いたり、いすに座って赤ちゃんを抱っこしながら試し読みしたりしていた。

 レジ横には「ヒト・モノ・コトが本でつながり、敦賀の未来が動き出す」がテーマの「共読知」コーナー。おぼろ昆布や箸などの地元特産や、市内で活動する本好き「本人(ほんびと)」が人生を変えた5冊を選んで紹介している。2階には仕事や趣味、恋愛など「身近な暮らしを素敵(すてき)に変えるヒント集」となるような本を集めた「日常知」コーナー。ワークショップや読み聞かせなどの催しに使えるスペースや、仕掛け絵本やビッグブックなどもそろう「絵本ワンダーランド」もある。

 大手書店の丸善雄松堂と編集工学研究所(ともに東京)が運営する。同研究所所長で編集者の松岡正剛さんは言う。「ちえなみきで本に出会っていただくと皆さんが持っている何かがつつかれ、騒がしくなるでしょう」

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 JR敦賀駅西地区エリア「TSURUGA POLT SQUARE 『otta(オッタ)』」が9月1日開業した。交流と日常的なにぎわいの創出を目指すエリアの各施設を紹介する。

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