「学校現場の労働環境改善願う」 教諭のパワハラ訴訟で和解 長崎地裁

和解成立後、記者会見で学校現場の労働環境改善への思いを語った佐藤さん=長崎市築町、メルカつきまち

 長崎市立学校に勤務していた男性教諭が同僚教諭からパワハラを受け、任用する市の対応が不十分だったなどとして市に損害賠償を求めた訴訟は9日、長崎地裁(松本武人裁判官)で和解した。和解条項には、市教委が相談体制の改善を図ることが明記された。原告で県高教組書記長の佐藤真一郎さん(53)は会見し「学校現場の労働環境の改善につながることを願う」と語った。
 訴状などによると、佐藤さんは市立学校の職員だった2019年、生徒指導の対応を巡り同僚教諭から一方的に叱責され、暴言を吐かれるなどのパワハラ行為を受けたと主張。校内の相談員に申告したが、相談体制が十分に機能していなかったと訴えていた。
 和解条項によると、市側が同僚教諭の言動は不適切だったと認め「遺憾の意」を表し、▽ハラスメントの相談を受けた際は相談者に対応結果の書面交付を義務付け▽市教委が直接相談対応できる点を周知▽校内研修の開催▽全職員に対するアンケートの実施-といった相談体制の改善に取り組むとしている。これらを踏まえ、原告側は賠償金の請求を放棄した。
 佐藤さんは会見で、和解により「現場任せや内部処理だけで済まない仕組みに近づけたと思う」と評価。「判決での金銭的勝利ではなく、相談制度の実効性を高める和解を選択した」と話した。
 教諭間のパワハラについて相談体制と人事評価に課題があると指摘する。市教委に相談できることが現場の教職員に周知されていなかったため誰にも相談できず、無念の思いで職場を離れた人もいたという。ただでさえ、人事評価を気にして管理職に被害申告をしづらいのに、業績が賃金に反映される評価制度が全国的に導入されつつあり、さらに申告が困難になる危険性があると警鐘を鳴らした。
 佐藤さんの代理人弁護士は対応結果を書面で交付することについて「相談員が緊張感を持って適切な対応をするようになる。相談者は対応内容が見え、不満があれば次の策をとることもできる」と述べた。佐藤さんは市の改善点を県教委にも要望したいとしている。


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