殺処分完了、教訓生かし2週間前倒し 那須烏山の豚熱 安全性と迅速性を両立

殺処分が完了した豚舎で清掃作業に当たる県職員ら=8日夜、那須烏山市(県提供)

 豚熱が発生した那須烏山市の大規模農場で9日、国内最多頭数となる5万6298頭の殺処分と埋却が完了した。昨年4月に那須塩原市で発生した豚熱の防疫措置での教訓を生かした人員配置などで、作業は予定より約2週間早く進んだ。一方、再発を警戒する中での発生を県は重く受け止めており、11月にも全農場を対象に改めて立ち入り検査を実施する。県農政部の青柳俊明(あおやぎとしあき)部長は下野新聞社の取材に対し、「まだまだリスクはある。気を引き締めて一から対応を徹底する」と述べた。

 県によると、7月23日に始まった殺処分作業は、今月9日まで約1カ月半にわたり行われた。防疫措置の従事者は同日正午時点までで延べ1万3897人。6千人超の県職員のほか、市町職員、農業団体や建設業協会など各団体の関係者に加え、人材派遣会社からも3976人が投入された。

 那須塩原市の農場での教訓として、今回は序盤から派遣社員も投入。長期化の恐れや夏季の過酷な作業を勘案し、マンパワーを手厚くした。作業手順についても効率化したという。

 昨年発生した作業中の事故を受け、今回は安全管理を専門に担う責任者を配置した。メンタルケアの相談体制も整え、看護師を常駐させた。熱中症の緊急搬送は複数件あったが、いずれも重症化には至らず、青柳部長は「安全確保は及第点に近い」とした。

 現在は豚舎の清掃や消毒などが進められており、農場内の防疫措置は今月末に終了する見込み。県は引き続き、安全性と迅速性の両立を目指す考え。

 今回のケースは「(全農場での)立ち入りの指導や点検に力を入れていた中で、結果として再発してしまった」(青柳部長)。県は11月以降予定する全農場への立ち入り調査で、リスクを洗い出して、さらなる改善を促していくという。

 発生初期の通報のあり方も課題として残る。今回は農場からの連絡ではなく、県への匿名通報で発覚したため、県が経緯を調べている。県は今後公表される国の疫学調査結果を踏まえて各農場の実態を調べ、必要な対応を講じる方針だ。

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