北陸新幹線に「住民の総意」で反対決議 京都・美山の芦生地区、その理由は

清流由良川が流れ、豊かな自然が広がる芦生地区(南丹市美山町芦生)

 京都府南丹市美山町がルートに想定される北陸新幹線の新大阪延伸計画で、原生林「芦生の森」が広がる同町の芦生地区が計画反対を決議したことが、2日までに分かった。膨大な残土の処分方法が未定であることや、希少な動植物を育む芦生の森に対する悪影響が予想されることなどが理由。同町のルート周辺で懸念を示す地区はあるが、明確に「反対」に踏み込んだ地区は初めて。

 反対決議は約50人が暮らす芦生地区が今春総会を開き、「住民の総意」として行った。芦生の森はルートからは外れるものの、近傍に巨大なトンネルが掘られれば影響は避けられないと判断した。

 決議では、残土の処分法が不透明で、ヒ素などが由良川に流出しかねないと不安視。芦生の森の生態系が変化する恐れも挙げた。少なくとも2兆1千億円と見込まれる建設費の一部を南丹市が負担する可能性も反対の一因とした。

 決議時に区長だった清水勝さん(66)は「工事の影響で移住が減る恐れもある。他の地区と連携して反対していく」と話す。

 延伸を巡っては、芦生地区の隣で、ルートになりうる田歌地区が2020年から環境影響評価(アセスメント)の受け入れを拒否している。田歌地区に近く、国の重要伝統的建造物群保存地区「かやぶきの里」の北村かやぶきの里保存会も、21年に計画の白紙撤回を求めていくと決定。事業への慎重姿勢を示す地区や団体が増えている。

 23年の着工も一部で取りざたされる中、芦生地区は田歌地区や同保存会などと連携を強化。同町の広域自治組織「知井振興会」に対し、国や工事を担う鉄道建設・運輸施設整備支援機構(横浜市)へ地元の考えを伝える窓口を同振興会に設けるよう働きかけたいという。

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