3年生、夏物語2022 vol.10 野球 明豊の看板を背負った1年間、大きく成長した江藤隼希(3年)

1年間、大きな重圧と戦った。夏の終わりとともに明豊高校野球部のキャプテンという肩書きを下級生に譲った江藤隼希(3年)は、今は純粋に野球を楽しめているという。「学校が終わって用事がない日はグラウンドに行き、次のステージでプレーするために自分が成長できることだけを考えて練習している。これまでと違った楽しさがある」と自分で考えたメニューをこなし、汗を流す。

昨夏の甲子園1回戦で敗れた数日後に新チームがスタートし、江藤はキャプテンに任命された。最初のあいさつで「チームのことは自分と副キャプテンの2人に任せてくれ。みんなは自分の力を出し切ることだけに集中してほしい」と伝えた。この日から全てのプレッシャーを自分が背負う覚悟を決めた。

コロナ禍で入学。「明豊野球」とは何かを理解できないまま2、3カ月が過ぎ、その後も対外試合や強化遠征の経験は少なく、練習が制限された中で過ごした学年だ。最上級生となってからもコロナ禍の弊害と向き合いながら、「どうすれば勝てるか」を副キャプテンの牧野太一(同)、竹下聖人(同)と話し合う日々が続いた。

新チームとなり初めての公式大会となった「第140回県高校選手権」で優勝し、チームの方向性が決まった。「勝って反省できるチームになろう」。勝ち続けることが「明豊野球」と悟り、ささいなミスや記録に残らないミスも洗い出し、課題を見つけては修正した。結果を出し続けることで前向きに修正できたチームは、その後も県内負けなしで1年間を終えた。

江藤自身エース番号を背負い、勝負強いピッチングで先発、中継ぎ、抑えと与えられた役割を果たし、チームの勝利に貢献した。最後の夏の甲子園の県予選は、新型コロナウイルスに感染してホテル療養を強いられ、テレビで仲間の戦いを観戦した。それまでずっとベンチに入り、主力として試合に出てきた江藤は、初めて第三者として客観的にチームを見ることができたという。「ベンチの雰囲気が良く、試合の内容も完璧。間違いなく甲子園に行けると思った」。自分が先頭に立って引っ張ってきたチームだが、いつの間にか全員が、チームを先導する力を持つようになっていたことがうれしかった。

憧れの甲子園では3試合を戦った。3回戦の愛工大明電(愛知県)戦の先発マウンドに立ち、2回を投げ抜いた。「1カ月半ぶりの登板だったが自分の投球はできた。ベスト16は大きな結果だと自信を持って言える。いいチームだった」。この1年間は大きなプレッシャーもあったが、「今思えば素晴らしい経験ができた。コロナさえ楽しむことができた」と話す。全てを受け入れ達観した姿があった。

「野球の楽しさを知った3年間だった」と話す

(柚野真也)

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