【角田裕毅F1第16戦密着】初日のデータでセットアップの方向性が明確に。ペースも向上「最後尾からでも追い抜きは可能」

 金曜日のフリー走行後、「現時点でクルマがバラバラなので、日曜日のレースに向けて、セットアップをどちらかに振ったほうが良い」と語っていた角田裕毅(アルファタウリ)。その理由は「ミディアムハイスピードコーナーでグリップがそんなに感じられずにバランス変化を起こしていたり、低速コーナーの出口でのトラクションに課題がある」からだった。

 F1イタリアGPの舞台であるモンツァは、ストレートをミディアムハイスピードコーナーやシケインでつないだレイアウトになっている。つまり、金曜日の段階で角田とアルファタウリのAT03はストレートを除いて、コースのほとんどで格闘していたわけである。

 この状況で、一夜ですべてを改善させるには、大幅なセットアップ変更が必要となる。当たればいいが、外してしまうと、取り返しがつかない。そのリスクを考えると、金曜日の夜のセットアップ変更は、ミディアムハイスピードコーナーに合わせるのか。それとも、低速コーナーの出口でのトラクションの改善に集中するのか。どちらかひとつに絞ったほうが確実だというのが、角田の考えだった。

 テクニカルディレクターのジョディ・エギントンによれば、「金曜日の走行でタイヤと空力のデータを十分に収集できたので、マシンを改善するために進むべき方向が明確となり、一晩でセットアップを収束させることができた」という。

 エギントンが言う通り、角田はフリー走行3回目で8番手のタイムをマーク。初日の15番手から大幅なペースアップに成功した。

 しかし、角田は金曜日の時点でオランダGPでの戒告処分による10グリッド降格と、イタリアGPでのパワーユニット交換による最後尾スタートと、金曜日のフリー走行での黄旗無視による3グリッド降格の3つのペナルティを科せられていたため、予選でいくら上位のポジションを獲得しても、最後尾からのスタートは免れない状況にあった。つまり、予選は日曜日のレースに参加するために、ポールポジションから107%以内のラップタイムを刻んで、通過さえしていればよかった。

ソフトタイヤでコースに向かう角田

 チームメイトのピエール・ガスリーに100分の1秒差の8番手でQ2に進出した角田は、自分のことだけを考えれば、ここで予選は終了してもよかった。しかし、角田はQ1を終了した後も、コクピットにとどまった。理由は「Q2で、ガスリーにスリップストリームを使わせるため」(角田)だ。中団チームの戦いは拮抗しており、Q3へ進出するにはスリップストリームによるアシストが重要になるからだ。

「いつでもコースに出られるようスタンバイしていた」という角田。しかし、「Q2の最後までどっちにするか考えた末に、最終的にガスリーにトウを使わせなくてもいいという判断を下したので、アタックに出るのをやめました」(角田)という。

 こうして、角田はQ2は一度もコースに出ることなく、15番手で終了。Q3に実力で進出できる速さがあっただけに、今回パワーユニット交換しなければよかったという気持ちはなかったのかと尋ねると、角田ははっきりとその考えを否定した。

「最後尾からでも、オーバーテイクは十分可能だと思っています。モンツァはもっとも追い抜きが可能なコースだと思っているので、グリッドペナルティのデメリットは小さいですから」

 日曜日の巻き返しに期待したい。

2022年F1第16戦イタリアGP 角田裕毅(アルファタウリ)

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