赤旗終了&ペナルティで混乱も、アルピーヌ育成のビクトール・マルタンスがFIA F3タイトルを獲得【第9戦モンツァ レース2】

 9月11日、2022年シーズンのFIA F3最終戦となる第9戦モンツァの決勝レース2(フィーチャーレース)がイタリアのモンツァ・サーキットで開催された。レースは赤旗中断のまま終了を迎え、ゼイン・マロニー(トライデント)が今季3勝目を飾った。

 一方、ドライバーズタイトル争いはアルピーヌ育成のビクトール・マルタンス(ARTグランプリ)が5秒のタイムペナルティを受けるも5ポイント差でランキングトップを死守。参戦2年目のフランス出身、21歳のマルタンスが2022年シーズンのFIA F3チャンピオンに輝いた。

 全9大会18レースが行われた2022年シーズンのFIA F3。最終レースを前に、タイトル争いはマルタンス、アイザック・ハジャル(ハイテックGP)、オリバー・ベアマン(プレマ・レーシング)、ロマン・スタネ(トライデント)、マロニー、アーサー・ルクレール(プレマ・レーシング)の6名に絞られた。

 朝陽が昇りつつある現地時間8時35分(日本時間15時35分)にスタートを迎えると、2番グリッドスタートのマロニーがホールショットを奪う。その背後ではランキングトップのマルタンスが3番手に浮上。4番手にスタネ、5番手にベアマン、6番手にルクレールと、タイトル候補が続いた。一方、ランキング2番手につけるハジャルは15番手と逆転タイトルに向けては苦しいポジションに。

 しかし、オープニングラップのターン3で後方のデビッド・ビダレス(カンポス・レーシング)がラファエル・ヴィラゴメス(ファン・アメルスフォールト・レーシング)に追突。2台ともにグラベル上に車両を止めたことでセーフティカー(SC)が導入される。

 5周目にリスタートを迎えるとポールスタートのアレクサンダー・スモリヤー(MPモータースポーツ)がマロニーに襲いかかる。第1シケインで2台がサイド・バイ・サイドの戦いとなるなか、3番手のマルタンスが2台を続けて攻略し、ついにラップリーダーに浮上する。

 マルタンスはファステストラップを更新しつつ、後続にギャップを広げる。そんななか、8周目の第1シケインでマロニーがスモリヤーを攻略し2番手に浮上。続く第2シケインへはマルタンスと並走して進入も、ここではオーバーテイク叶わず。しかし、上位6台が2秒以内という接戦のなか、9周目の第1シケインでマロニーがトップに浮上する。

 その背後ではスモリヤー、スタネ、ルクレールが3ワイドとなった末に接触。3台がともにポジションを下げることに。これでトップはマロニー、2番手マルタンス、3番手ベアマン、4番手にジャック・クロフォード(プレマ・レーシング)というオーダーに。

 続く12周目の第1シケインでベアマンがマルタンスをパスし、2番手に浮上。ランキング首位を死守するためにも無理はできないマルタンスはベアマンの背後3番手でレース後半に突入。また、13周目には後続集団がホームストレートで5ワイドの戦いを繰り広げられるなど、至る所でバトルが展開された。

 そして、14周目の第1シケインでベアマンが仕掛けるが、ここはマロニーが守る。ベアマンは続く14周目にも第1シケインで仕掛けるが、マロニーとフロントタイヤがわずかにタッチし、ベアマンはランオフエリアに避ける。これでマルタンスも接近し、トップ3台がテール・トゥ・ノーズの見応えあるバトルを続ける。

 そんななか、16周目のターン7(レズモ)立ち上がりでクッシュ・マイニ(MPモータースポーツ)単独スピン。コントロールを失いコースを塞ぐかたちで滑るマイニの車両をブラッド・ベナビデス(カーリン)が避けきれずクラッシュ。このアクシデントで2度目のSCが導入されたが、車両改修とスポンジバリアの修復のため、残り5周を残してセッションは赤旗中断に。

 その赤旗中に、なんとトラックリミット違反によりマルタンスに対し5秒のタイムペナルティが課せられること、そしてレースが再開されないことが発表となり、サーキットは騒然とした雰囲気に一変。マルタンス、そしてARTグランプリのスタッフは困惑した表情を浮かべる。

 暫定リザルトがなかなか発表されない事態となるなか、4番手につけていたウィリアム・アラタロ(イェンツァー・モータースポーツ)、9番手につけていたジョニー・エドガー(トライデント)に対しても、トラックリミット違反で5秒のタイムペナルティが課されることに。

 そして、赤旗掲示から約20分後に暫定リザルトが出され、優勝はマロニー、2位にベアマン、3位にクロフォード、マルタンスは4番手に後退するも5ポイント差で、マルタンスが2022年シーズンFIA F3のドライバーズタイトルを獲得。タイトル決定のアナウンスの瞬間、マルタンスは満面の笑みで雄叫びを上げた。

 今年も激戦が繰り広げられたFIA F3。2023年シーズンも新たなドライバーが加わり、F1へのステップアップを目指した熾烈な戦いが繰り広げられるだろう。

3番手で赤旗中断を迎えたが、ペナルティが課されると発表され困惑するビクトール・マルタンスとARTグランプリのスタッフ
2022年FIA F3王者となったアルピーヌ育成のビクトール・マルタンス(ARTグランプリ)
2022年FIA F3王者となったアルピーヌ育成のビクトール・マルタンス(ARTグランプリ)

■FIA F3第9戦モンツァ レース2 暫定結果

Pos. No. Driver Team Time/Gap

1 3 Z.マロニー トライデント 15Laps

2 6 O.ベアマン プレマ・レーシング 0.587

3 5 J.クロフォード プレマ・レーシング 5.024

4 7 V.マルタンス ARTグランプリ 6.061

5 4 A.ルクレール プレマ・レーシング 6.086

6 2 R.スタネ トライデント 6.420

7 25 W.アラタロ イェンツァー・モータースポーツ 9.628

8 1 J.エドガー トライデント 12.080

9 18 I.ハジャル ハイテックGP 13.555

10 31 牛島リース ファン・アメルスフォールト・レーシング 14.228

11 26 Z.オサリバン カーリン 14.696

12 23 I.コーエン イェンツァー・モータースポーツ 15.613

13 27 B.ベナヴィデス カーリン 16.820

14 29 F.コラピント ファン・アメルスフォールト・レーシング 18.031

15 12 K.マイニ MPモータースポーツ 20.958

16 16 F.ピッツィ チャロウズ・レーシング・システム 21.196

17 21 H.イェーニー カンポス・レーシング 21.298

18 24 F.マルベスティティ イェンツァー・モータースポーツ 21.807

19 14 L.トーチ チャロウズ・レーシング・システム 23.790

20 10 C.コレ MPモータースポーツ 24.324

21 19 N.アズマン ハイテックGP 29.215

22 28 E.トゥルーリ カーリン 30.145

23 15 A.ファムラロ チャロウズ・レーシング・システム 43.109

24 9 J.コレア ARTグランプリ 61.827

25 17 K.フレデリック ハイテックGP 62.568

26 22 J.マルティ カンポス・レーシング 93.017

– 11 A.スモリアー MPモータースポーツ DNF

– 8 G.ソーシー ARTグランプリ DNF

– 30 R.ヴィラゴメス ファン・アメルスフォールト・レーシング DNF

– 20 D.ビダレス カンポス・レーシング DNF

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