30代後半夫婦、4800万円の住宅ローンを組んで子供2人を育て上げたその先は…

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、37歳の会社員の男性。現在36歳の妻は妊娠中で、数カ月後に第一子が誕生予定。できればもう1人子供が欲しいといいますが、同時に住宅も購入予定。今の家計のまま可能でしょうか? FPの三澤恭子氏がお答えします。


37歳会社員、現在妻(36歳)が妊娠中で、4カ月後に一人目が誕生予定です。できればもう一人欲しいと考えております。

そこで、今の貯蓄や給料で、今から住宅ローンを組んで、子供二人(予定)を育てつつ、老後やっていけるか心配です。アドバイスをお願いいたします。

住宅ローンは、物件購入額5,000万円、借入額4,800万円、金利0.4%変動、返済期間35年を予定しています。

老後資金は、国民年金は現在まで満額払っています。ほか、厚生年金あり。退職金は1,000万円見込みです。

【相談者プロフィール】

・性別:男性、37歳、会社員

・妻:36歳 ・子供:4カ月後に一人目

・住居の形態:賃貸(近畿地方)

・毎月の世帯の手取り金額:40万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:180万円

・毎月の世帯の支出の目安:30万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:6万7,000円

・食費:4万5,000円

・水道光熱費:1万5,000円

・保険料:3万3,000円

・通信費:2万1,000円

・車両費:1万4,000円

・お小遣い:8万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):800万円

・現在の投資総額:650万円

・現在の負債総額:-円

三澤:ご相談ありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの三澤恭子です。もうすぐ子供さんがお生まれになるとのこと、待ち遠しいですね。

相談者様は家の購入も検討されており、もう一人子供がほしいものの、今の貯蓄や給料で住宅ローンを返済し子供二人を育て上げ、老後資金の準備ができるのか心配されているのですね。現状の収支からシミュレーションしてみましょう。

使途不明金の使い道が鍵に

まずは現在の収支から確認していきましょう。手取り収入40万円に対し支出が30万円とのことですが、10万円ほどの使途不明金があり、使い道が気になります。

毎月の支出に4,800万円の住宅ローンの返済額(約12万2,500円/月額)と未就学児一人当たりの年間養育費(57万円)を上乗せするとどうでしょう。

住居費に5万5,500円、養育費として4万7,500円を加えると、1カ月あたりの支出は約38万円となり、貯蓄に回せる金額は2万円ほどとなります。仮に使途不明金の10万円が趣味や娯楽、その他の生活費に回っているとした場合、マイホームを購入し子供が生まれると、貯蓄から年間120万円ずつ取り崩しが始まります。

では、もう少し詳しくみていきましょう。

金利上昇時の対応策をとっておくことが大切

相談者様が利用する変動金利の住宅ローンは、借入期間中、定期的に適用金利が見直しされるタイプとなります。一般的には半年ごとに金利が見直されますが、毎月の返済額は5年間変わらないという「5年ルール」と金利が大幅に上昇した場合でも「125%ルール」によって返済額が一気に上がっていかない仕組みです。

今後35年の金利の予測はできませんが、5年ごとに0.5%ずつ金利が上昇するものとし、年間返済額を計算してみましょう。

シミュレーションから、子供が中学・高校・大学と進む間、住宅ローンは当初の支払額より年間20~35万円ほど上昇していくこととなります。金利上昇時に毎月の返済額を減らす繰上げ返済(返済額軽減型)ができるよう資金準備ができると安心です。

ちなみに支払い総額は当初の金利0.4%での試算と比べ880万円ほど増えます。

次に子供の養育費および教育費はいくら位かかるのか見ていきましょう。

養育費と高校までの教育費は毎月の生活費からのやりくりが基本!

養育費について、内閣府の「平成21年インターネットによる子育て費用に関する調査」結果をもとに筆者が試算したところ、子供1人にかかる一年間の養育費は未就学児で57万円、小学生67万円、中学生79万円となっています。高校は中学のデータを代用し79万円とし、大学は日本学生支援機構の「令和2年度学生生活調査結果」より66万円となりました。少なくとも大学卒業までに一人約1,500万円が必要となりそうです。

一方、教育費はお子さんがどの進学コースを選択するかわかりませんが、小・中・高と公立、大学は自宅から私立文系とした場合、約1,200万円となります。

なお、子供が中学を卒業するまでに約200万円(所得金額等により異なる)の児童手当が国から支給されます。養育費に充てるか教育費の一部とするか、いずれにしても心強い子育て支援となります。

最後に住宅ローン、養育費および教育費をキャッシュフロー表で確認してみましょう。

夫婦2人から4人家族の家計を予測

【前提条件】
◆住宅の購入および第1子誕生は、来年1月とし、第2子は3年後と仮定
◆収入および住居費を除く支出は65歳まで変わらないものとする
◆プロフィールの収支より使途不明金は年間244万円(ボーナス分130万円、毎月の◆収支の差額9.5万円×12か月)とする
◆住宅ローン金利は5年ごとに0.5%ずつ上昇するものとする
◆子供1人にかかる一年間の養育費は、未就学児57万円、小学生67万円、中学・高校生79万円、大学生66万円とする
◆教育費は、小中高と公立、大学は自宅通学の私立文系とする(幼稚園の利用料は無償化のため、教育費から除く)
◆児童手当は第1子・第2子とも総額200万円として試算する
◆物価上昇率等は考慮しない

キャッシュフロー表より、現状の収支では4,800万円の住宅ローンを組み、子供2人を育てつつ老後資金の準備をすることは厳しい状況です。

マイホーム購入後は固定資産税など維持費や修繕費なども必要ですし、子供が生まれると夫婦二人の時とは支出項目が変わってくるでしょう。まずはプロフィールの支出には記載されていないボーナス130万円と月々9万5,000円の使い道を明らかにする必要があります。

支出の見直し+住宅購入+子供2人の場合

この使途不明金のうち半分(122万円)が貯蓄にまわることで年間収支は大きく改善されますが、1人目が大学に入学する頃から貯蓄の取り崩しに拍車がかかります。

また、72歳まで続く住宅ローンを退職金で返済してしまうと貯蓄は底を突き、老後資金も準備できません。

ライフプランの優先順位は「家か?子供か?」を明確に!

子供は2人欲しいとのことですが、住宅を購入する前に、ご相談者様ご夫婦にとって今後のライフプランの「優先順位は何か?」よく話し合ってみてください。やはり子供は2人となれば家族4人の生活を想定した上で、中古住宅や固定金利での返済計画などマイホーム選びの見直しや子供が幼稚園に入ったタイミングで妻がパートにでるなど収入を増やすことも視野に入れて家族計画を考えてみてはいかがでしょう。

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