制作費307万円「彼女、お借りします」水原千鶴の等身大フィギュア 原作者絶賛「常軌を逸している」

テレビアニメ第2期が放送中の「彼女、お借りします」のヒロイン、水原千鶴の等身大フィギュアが注目を集めている。同サイズでは人体とコスチュームの一体型が通例だが、原作者・宮島礼吏氏の要望により、製作途中で衣服が布製で着脱可能な仕様に変更。日数、費用が膨らみ製作に約10カ月、制作費307万円を要した。連載先の「週刊少年マガジン」で募集されたフィギュアとの〝リアルデート〟企画には多数の応募が寄せられ、都内の渋谷PARCOで開催中の展示では、モデルのようにライトアップされたヒロインが輝きを放っている。

身長162.5センチ(パンプスを含めると170センチ)。重量は約40キロ。単行本1巻の表紙を忠実に再現した水原千鶴を実際に目の当たりにすると、心がざわつく確かな存在感があった。渋谷PARCO5階の1/ONE SLASH店内で11月6日まで、オリジナルグッズ販売とともに等身大フィギュアを展示中。パルコ担当者が「よりアートとして評価していただけるように、モデルのリアリティを演出しました」と話すように、華やかな照明はステージと遜色ない。思わず話しかけるファンがいるというのもうなずける。

主人公・木ノ下和也と〝レンタル彼女〟サービスで知り合った水原千鶴の関係を軸に、元カノ・七海麻美、和也を慕う更科瑠夏、千鶴の後輩・桜沢墨らも躍動する人気ラブコメ。6月22日発売のマガジン誌面で東京・浅草花やしきを貸し切り、等身大フィギュアと園内でデート写真を撮影する企画を発表。デート相手の応募数は「かのかり」関連史上最多だったという。

講談社の担当者は「『一生に一度でいいから水原とデートしたい!』『いつも和也ばっかりずるいので私もお願いします!』など、ご応募の際には皆様からの熱いメッセージもたくさんいただけました。改めて水原千鶴というキャラクターが、読者の皆様からこんなにも愛されているのだとリアルに実感できる企画となりました。無事に当選者の方も決定し、秋中に撮影会を行います。〝理想の彼女〟水原とのぜいたくなひと時を、思う存分楽しんでいただけたらと思っています!」と語った。

ライトアップが変化し、印象が刻々と変わる水原千鶴の等身大フィギュア=都内
吸い込まれるような水原千鶴の表情=都内
製作途中の衣装合わせの様子

この反響は、立体造形に定評があるデザインココ社による等身大フィギュアの完成度の高さによるものだろう。美しい長髪、白い肌、長い脚…抜群のスタイルを誇る美少女を完全に再現。本物の洋服の着用は異例で、ストラップの隙間からのぞく肩口の肌感など、その効果は各所で際立っている。

講談社は昨年8月6日に同社に対して製作を依頼。同31日に宮島氏の希望によりコスチュームが布製に変更された。今年2月3日に宮島氏自らが立ち会い、原型の監修、コスチュームの素材が選定され、6月2日に納品された。

担当者は「通常はフィギュアと一体化して製造する衣装を、リアルな布製にしたいと宮島先生が話されたとき、納品までの時間もなく、お断りしたい気分でした。が、製作を依頼しているデザインココさんに相談したところ、いとも簡単に可能です、とのお返事をいただけました。とはいってもコミックス第1巻のイラストと同じデザイン・柄・質感の衣装が本当に仕上げることができるか不安でしたね。デザインココさんの尽力で、イラストと同じ衣装の布サンプルを宮島先生にご覧いただき、OKをもらった時はこだわり抜いて良かったと思いました。その分、当初の予算をオーバーし、納期も調整せざるを得ませんでした」と振り返った。

等身大フィギュアの展示の様子=都内
店内で販売中のオリジナルグッズ=都内

衣類の装着には「通常のマネキンであれば、商品である衣料を破るわけにも行かないので、腕や手首、首、足など、パーツ分けされています。ただ、パーツ分けするため、関節部分などのつなぎ目があちこちに見えることになります」と述べ「見栄え優先でフィギュア本体のパーツ分けは極力せず、衣装をマジックテープなどで止める方法を用いました」と説明した。完成後の評判に関し「やはり驚きの声が多く『もはや実在してるじゃん!』などとツイッターを中心に数多くのリアクションをいただけました。『いい意味で常軌を逸している』と宮島先生からもお褒め(?)いただいた〝撮影会デート〟の募集も相まって、想像以上に多くの方に認知していただけたかと思います。このフィギュアを入り口として、新たに原作を読み始めてくださった方も多いようで大変うれしく思います!」と続けた。

アニメ第2期PRの一環で、等身大フィギュア制作を提案した宮島氏も、大満足のようだ。「連載開始時からの悲願の一つ、1/1水原千鶴フィギュア、お話をいただいた時は歓喜するとともに一つだけお願いさせてもらいました。『服は脱がせる様にして下さい』。むしろ燃えてやる気になったと語って下さった制作スタッフの方々に感謝です。『かのかり』らしい大人の全力悪ふざけが出来ていると感じています」と語った。

「彼女、お借りします」ヒロイン・水原千鶴の等身大フィギュア
テレビアニメ2期が放送中の「彼女、お借りします」©宮島礼吏・講談社/「彼女、お借りします」製作委員会2022

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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