<金口木舌>熊本地震

 地球は生きている。大地が前触れもなく突然揺れ動く地震を目の当たりにすると、そう感じざるを得ない。道路は寸断され、電気・水道・ガスなどのライフラインが一瞬にして断たれる▼その厳しい現実に直面しているのが熊本地震で被災した人たちだ。テレビから流れる緊急地震速報の機械的な音声と、アラームの音に緊張が走る。東日本大震災を経験した今、あの津波と原発事故の悪夢がよみがえる

▼食料に事欠き、トイレも満足に使えず、避難所など慣れない場所で夜を過ごす心細さに追い打ちを掛けるようにじわじわと余震が続く。地震は熊本県以外にも広がり、収束の兆しが見えない。避難者の精神的なダメージは計り知れない

▼たんすのわずかな隙間から、生後8カ月の赤ちゃんが救出される一方、がれきの下で亡くなった人たちもいる。救助活動は昼夜を問わず続いている。一人でも多くの命を救ってほしい

▼自然の脅威に対し、人間はただただ無力であることを痛感させられる。なぜこのような試練を受け、耐え忍ばなければならないのか、考えても答えは出ない

▼今、この空の下でどれだけの人が眠れない朝を迎えたのだろう。のどの渇きや空腹に耐えている人、けがを負ってしまった人、住む場所を失った人たちがどう現実に向き合っているのか、思いをはせずにはいられない。もどかしさだけが募る。

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