侵攻開始から約半年…最前線を取材する、ジャーナリストが語るウクライナの現状

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。8月29日(月)放送の「フラトピ!」のコーナーでは、ジャーナリストのクレ・カオルさんをゲストに迎えて、“ウクライナ侵攻”から約半年が経過した現地の様子を語っていただきました。

◆最前線を取材するジャーナリストが語るウクライナの現状

香港出身のカオルさんは、2019年の香港民主化デモをきっかけにジャーナリスト活動を開始し、2020年にはベラルーシの反政府デモを取材。そして、2022年2月18日にウクライナの首都キーウに入り、約半年に渡って現地で発信を続けてきました。

いち早くウクライナ入りした理由は、ベラルーシを取材した際にできた多くの知り合いが、独裁政権から逃れキーウやポーランドに住んでいたため、彼らの状況が気になったからだとカオルさん。

それ以降、ウクライナではさまざまな動きがありました。東部のドンバス地方、南東部のマリウポリ、クリミア半島の北ヘルソン州などはロシア軍が支配し、ロシア軍が占領したザポリージャ原発を巡っては、現在もウクライナ軍と交戦。

当初、ウクライナ西部のリビウやキーウを取材拠点としていたカオルさんでしたが、その後取材対象は東部地域へと拡大。カオルさんは、「ハルキウでもかなり強い爆撃が毎日続いていたが、ドネツク州に入るとセベロドネツクも含めて毎日、多いときは1時間に100発以上爆弾が飛んできていて、そんな危ない街で暮らしている人たちがまだいる」と現地の様子を明かします。

そうした地域は国連をはじめとした人道支援チームも入ることが困難だそうで、「バフムートという街よりも東に行こうとすると、そこはかなり重装備をしたボランティアが入るようなところで、そうしたチームもたまにロシアの攻撃を受けて命を落としたりしている」と過酷な状況を語ります。

◆もしかしたら死んでいた…爆弾が足元に着弾したことも

この日は、カオルさんが撮影してきた映像や写真とともに現地の様子を解説。リシチャンシクでは足元に爆弾が着弾したこともあったそうで、「そのときはセベロドネツクに入ろうとしたが橋が燃えていたのでどうやって渡るか悩み、兵士に相談していたところに爆弾が飛んできた。側溝に隠れている間も2発目、3発目が飛んできて、もしも側溝に(爆弾が)落ちていたら死んでいたと思う」とカオルさん。そのときは、報道関係者であることを示す"PRESS”と記されたものを身につけていたにも関わらず、問答無用で攻撃されたそう。

また、首都キーウではマンションも攻撃の対象として爆撃され崩壊。カオルさんは「キーウも最初の1ヵ月ぐらいは爆撃が続き、毎日必ず爆撃があった。それも軍事施設ではなく、狙ったのかどうかはわからないが、普通の民間施設に(爆弾が)落ちることも多く、たくさんの民間人の死傷者が出ていた」と振り返ります。

さらに、深刻な虐殺行為が行われていたブチャも取材。「僕が入ったときには街の中心部にある教会の隣に大きな穴が掘ってあり、そこにたくさんの民間人の遺体が埋められていた」と悲惨な状況を明かします。

一方で東部地域については「東のドネツク、リシチャンシクなどは人の数がかなり少なくなっているが、まだ行き先がなく、そこに残っている人もいる。彼らは電力やネットがなく、水道もない生活を送っている」と過酷な生活を伝え、「リシチャンシクの知り合いは、水を取りに行く途中に爆弾の攻撃を受けて、5月に亡くなった」としみじみと語ります。

◆日本人へのメッセージ、ロシアと国境を接する日本への警鐘

カオルさんの話に、臨床心理士のみたらし加奈さんは「本当に言葉が出ない。カオルさんの(取材による現地の)映像や写真を見て、自分が何を言っても全て薄っぺらいもののように感じてしまうほどの強い衝撃があった」と複雑な心境を吐露。

そして、「日本の報道を見てもどうなっているのかわからない。状況というのは文字ベースで把握できたとしても、そこにどういった重たさがあるのか徐々にわからなくなってきてしまっていると思うので、こうしてカオルさんが今日、生きてこのスタジオに立ち、生の映像を届けてくれたのは本当にありがたい」と感謝の言葉も。

ウクライナでの取材を通じ、カオルさんは日本人に向けて「武器を捨てれば民間人は死なずに済むという考えがあるようだが、ウクライナが武器を捨ててもロシアは(攻撃を)やめないと思う。ウクライナ人たちが戦うという気持ちを日本のみなさんにも理解してほしいし、今後も支援してほしい」とメッセージを送ります。

自身は今後、再びウクライナに戻り、南部のヘルソン地域で取材を再開する予定だそうで「ミコライウという街があるが、そこは最近とても爆撃を受けている。もしかしたら今後、南の奪還に向けた作戦があるということなので、そこに滞在して取材する」とカオルさん。

そして最後に「ウクライナは日本とかなり離れた国だがロシアに接しているところは同じ。決して他人事ではない」と指摘し、「日本のみなさんには温かい目で支援をお願いしたい」と改めてサポートを訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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