「武雄温泉-長崎」約66キロを30分 快適に疾走 西九州新幹線かもめ

座席が5列並んだ西九州新幹線かもめの自由席

 23日に開業する西九州新幹線(武雄温泉-長崎)の報道向け試乗会が10日、あった。スピードと快適性を備えて、新たに生まれ変わる「かもめ」を一足早く体験した。
 JR佐賀駅から下りの在来線特急リレーかもめに乗車。武雄温泉駅で新幹線かもめに乗り換え、各駅で一時停車して終点の長崎駅に向かう行程だ。
 約80社140人の報道陣が待つ佐賀駅ホームに、おなじみの885系「白いかもめ」が着いた。新幹線開業に伴い、博多-長崎直通の特急かもめはなくなるが、引き続きリレーかもめとして博多-武雄温泉を走る。
 これに揺られること24分、武雄温泉駅に到着。ドアが開くと、ホーム向かい側では新幹線かもめが既に待ち構えていた。白と赤のツートーンカラーの新顔も、最近はメディアや走行試験で目にする機会が増えた。
 通常は3分で乗り換えだが、今回は出発まで20分ほど余裕がある。せっかくなので、新幹線車内を見て回る。6両編成のうち、下り側の1~3号車は指定席4列シート、上り側の4~6号車は自由席5列シート。やはり指定席の座席の方が広々としている。
 大村湾が見たくて進行方向右側に陣取る。滑らかに走り出し、しばらくすると加速による重力をかすかに感じた。最高時速になれば260キロ。車窓に目を向けると案の定、トンネルや防音壁に遮られ、山や水田がサブリミナルのように見える程度。トンネルは新幹線区間の約6割を占める。

新大村―諫早の車窓風景=大村市内

 5分ほどで嬉野温泉駅を過ぎ、県内に入る。新大村駅に向かう途中、長崎空港がほんの一瞬見えた。目まぐるしく風景が流れ去っていくが、揺れはほとんど気にならない。有明海沿いのカーブの多い線路を走る従来の在来線特急と比べて、車窓はさみしいが、乗り心地は圧倒的だ。
 諫早駅を通過後は、さらにトンネルが増える。「あと5分ほどで終点長崎に着きます」。車内アナウンスが流れ、しばらくすると、スピードが落ち、トンネルを抜けた。ぱっと目の前に街が広がり、一瞬息をのむ。稲佐山、マンションやホテル、二つ並んだ大きなガスタンク。見慣れたいつもの風景が、少し違って見えた。「新幹線で、長崎に来た」と実感した。
 白い屋根の下のホームに降り立つと、さっきの不思議な感覚は消え、日常に戻っていた。約66キロを30分で駆け抜けた。あっという間だが、半世紀近くの苦難と曲折を経て結実した“夢”の時間だ。23日以降は、これが長崎の新しい日常になる。
 一般公募の試乗会は18、19日に開かれる。


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