トヨタ、2台のペースの“異常な”違いに困惑「少し心配している」とバセロン/WEC富士

 WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦するトヨタGAZOO Racingのテクニカルディレクターは、第5戦富士で2台のGR010ハイブリッドがクリーンなレースをしたことを踏まえると、2台のパフォーマンス差は「異常」であると表現した。

 9月11日に富士スピードウェイで決勝が行われた第5戦の6時間レースでは、セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組の8号車が、マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組の7号車に、1分以上の差をつけて勝利を飾った。

 今回はセーフティカーやFCYなどによる競技中断がいっさいないクリーンなレースとなり、2台のトヨタGR010ハイブリッドはレース中、ガレージに入れられたり、コースオフなどをすることもなく、チェッカーフラッグを受けていた。

 このようにクリーンな状況のなかで8号車がこれだけの差をつけたことについて、テクニカルディレクターのパスカル・バセロンは「2台のマシンの間にこれほど大きなギャップがあるのは異常であり、少し心配している」と述べている。

「調べてみないといけない。7号車はバランスに問題があった。テストしたタイヤを使っているが、コンディションは違う。(マシンはドライバーが)ミスを犯しやすい状態だった。8号車には、より良いセットアップがあった」

「2台の間にこれだけの差がついたのは、普通のことではない。テストとはまったく異なるコンディションでレースが行われたことで、説明はできる。テストの後、(富士で走らせたらどうなるかを)類推する必要があったわけだが、結果的にここでは(テストとの)ギャップが生じたということだ」

ポールポジションからスタートしたものの、序盤のうちにチームメイトの先行を許した7号車GR010ハイブリッド

■「7号車とは違う方向性でセットアップした」とハートレー

 ハートレーは、8号車が今季2勝目に向けてクリアに走り切ることができたのは、「驚くべきこと」だと考えている。

 スタートドライバーのブエミからマシンを引き継いだ際には6秒ほどの差があったが、ハートレーのスティントではロペスとの差を30秒強にまで広げることとなった。

 さらに最終走者となった平川は、コンウェイを相手にした最後のダブルスティントで30秒の差をつけ、最終的には68秒差でトップチェッカーを受けている。

 バセロンによれば、8号車がもっとも大きなゲインを得られたのは、各ドライバーのダブルスティントの後半であったという。

「僕らは7号車とは違う方向性でセットアップを行ったんだ」とハートレーは明かす。

「(決勝での)路面温度が、週末の他の日よりも高いことが分かったので、違う方向へと進んだわけだけど、明らかにうまくいったね」

「僕は一番暑い時間帯を走ったけど、他のマシンに対するアドバンテージはちょっと驚きだった。すべてがよどみなく流れ、自分が築けたギャップには少し驚いている。すべてがうまくいったレースのひとつだった」

「僕ら3人は、ブレーキの設定やセットアップを考え出すために、エンジニアと真剣に取り組んできたんだ。ひとりのクルーとしてこれ以上のことはできいくらい、今日の僕らはとても強かった」

「(多くのマニュファクチャラーが参戦してくる)将来には、大きな競争が待ち受けている。このレースに勝ち続けるためには、今日のようなパフォーマンスを維持しなければならないね」

WEC第5戦富士6時間レースを制した8号車GR010ハイブリッド

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