免疫力は1歳半程度…難病の中学生が空手で全国V 「入院中の祖母にいい報告を」格上相手に判定勝ち

全国大会で優勝し賞状とトロフィーを手にする有田亘太郎さん=福井県坂井市内

 福井県坂井市の有田亘太郎さん(福井工業大学附属福井中学校3年)が、先天的な難病「原発性免疫不全症候群」を抱える中、空手道和道会の全国大会の組み手で優勝を果たした。大病を患い入院中の祖母(73)にいい報告を届けたい一心で戦った。「自分が頑張っている姿を見て、ばあちゃんには一日でも長生きしてほしい」と力強く話す。

 生後3カ月に病気が見つかった。成長しても免疫の値が上がらず、現在でも1歳半ほどの免疫しかないため、病気の重症化リスクが高いという。このため毎日、朝晩2回の抗生物質の服用を続け、3カ月に1度は検査や診察で通院している。今年2月には新型コロナウイルスに感染、持病の心配があるため11日間入院した。

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 空手を始めたのは春江東小学校1年の終わりごろ。母の小百合さんが「少しでも体力を付けて、精神的にも強くなってほしい」との思いで勧め、和道会の名空会春江道場に入門。現在は福井中学校空手道部で汗を流している。

 度重なる肺炎の影響で、肺の一部が石灰化し、息が上がりやすいというハンディを抱えながらも、「空手をやめようと思ったことはない」と言い切る亘太郎さん。「みんなでする練習が楽しい。笑顔と声を意識して、みんなできつい練習を乗り越えると達成感がある」と笑顔で話す。

 優勝したのは、愛知県で8月に開催された和道会の全国大会。得意とする上段のきざみ突きや中段のカウンターで勝ち進んだ。準々決勝では苦戦を強いられたが、格上の強豪相手に劣勢をはねのけ、判定の末勝利した。亘太郎さんは「普段から高校生との合同練習で鍛えてきた。緊張はしたけど、落ち着いて臨めた」と振り返る。県勢の同大会優勝は初めてという。

 早く結果を知らせたかったのが入院中の祖母だった。コロナ禍で面会できないため、電話と動画で悲願の優勝を伝えた。小百合さんは「孫の活躍を見るのが唯一の楽しみだから、すごく喜んでいた」と話し、亘太郎さんは「これからも大会で良い結果を残し、大きな病気と闘うばあちゃんを応援したい」と前を見据えた。

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