宮崎銀行、取引先の「増収増益率ランキング」2年連続トップ(前編)増収増益への支援の秘訣

 東京商工リサーチ(TSR)が今年8月に実施した「2022年・企業のメインバンク調査」で、宮崎銀行(TSR企業コード:909001847)は、宮崎県内で約6割のシェアを占めた。さらに、同行をメインバンクとして取引する企業の「増収増益率」は2年連続で全国トップだった。
 長引くコロナ禍に加え、後継者難など企業を取り巻く環境は厳しいが、顧客に寄り添った資金繰りの支援やコンサルティングが取引企業の成長を促している。
 TSRは、宮崎銀行の経営企画部、営業統括部、審査部、ビジネスソリューション部、国際部の各担当者に単独インタビューした。

―宮崎銀行の歴史は

 昭和初期の大恐慌の混乱したなか、県の政財界の強い働きかけで昭和7年(1932年)に県民銀行として設立された。30周年を機に「日向興業銀行」から「宮崎銀行」に改称し、「地域との共存共栄」を経営理念に、地域経済の発展、健全経営に努めてきた。

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‌宮崎銀行本店(宮崎銀行提供)

―ロゴやイメージマークの由来は

 ロゴ(行章)の3つの「ヤ」は、宮崎の宮(ミヤ)と毛利家の故事(三本の矢)を表し、中心に円を配し、円満(和)と団結を表現している。イメージマークは、宮崎銀行のイニシャル「M」と地域の人々を表す漢字の「人」をシンボライズし、ブルーは宮崎銀行を表すとともに宮崎の青い空、青い海原を、グリーンは宮崎の豊かな大地を表現し、当行と地域社会が共生・共感する姿をイメージしている。

―宮崎県の企業の県民性は

 社長のタイプは、真面目でおおらか。義理人情に厚く、地元が好きな人が多く、一旦、懐に入ると銀行の提案や様々な話を聞いてもらえる。取引企業には焼酎で全国に知られる酒造メーカーや食肉などの食品メーカーが売上高の上位を占める。食品メーカーを支える農業、農畜産業のブランド力も強みと考えている。

―コロナ禍での取引先への支援方法は

 地域から信頼される「ファーストコールバンク」を目指している。時代や環境のニーズに合わせながらも、変えるものは変える、変えないものは変えない、という「不易流行の精神」でお客様の課題解決や地域経済の活性化に取り組んでいる。コロナ禍で厳しい状況におかれた企業は多く、実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)を中心に、相談を多く受けた。
 現状は、コロナ禍に加え、原油・原材料高騰の影響もあり、県の制度融資も活用しながら支援を継続している。

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‌宮崎銀行のイメージマーク

―それでも業況の改善が遅れた企業もある

 業況的に厳しい取引先には、増員した「企業経営支援室」が対応している。2020年3月時点は3名だったが、8名に増員し、手厚く対応している。幸いゼロ・ゼロ融資などが行き渡り、資金繰りは保たれている。ただ、そのなかでも厳しくなった企業には、業況改善に向けた「経営改善計画書」作成の支援にも取り組んでいる。あわせてゼロ・ゼロ融資をご利用されている取引先には定期的なモニタリングを行い、資金繰りを支援している。 

―私募債が増加している

 私募債の発行は、財務内容の健全性が重要なポイントだ。それだけに私募債発行はコロナ禍でも財務の健全性をアピールでき、申し込みが増えている。私募債を引き受けた先は、地元の宮崎日日新聞に掲載させていただいている。贈呈式の写真等を新聞の見開き両面に掲載し、大きなPRになっている。私募債は1種類でなく、SDGsやみやぎんグリーン私募債「地球の未来」など、複数の私募債を提案している。通常の金利より高くコストはそれなりにかかるが、企業PRやイメージアップにつながり、手数料以上のメリットがある。

―オンライン化の浸透で海外戦略も変化したと聞く

 国際ビジネス支援は、海外に関する取り組みなどの課題やサービスをワンストップで提供している。また、連携機関を通じて解決策を提供する体制も確立している。全国、九州ともに2020年度の貿易取扱高は減少したが、2021年度以降は回復し、増加基調で推移している。コロナ禍の影響により海外への渡航が難しいため、2021年度からは海外とオンラインでつなぎ、海外進出に関する相談会を開催している。従来、参加企業の9割は決まった企業だったが、コロナ禍では約半数がこれまで主催セミナー等に参加していなかった企業だ。新しく海外に挑戦したい企業が参加しているようだ。コロナ禍で経営戦略の見直しを検討し、海外市場を狙う企業も増えている。
 海外進出に関する相談会は、オンラインで海外と直接つなぎ、コスト負担も少なく参加しやすいだけに新しい企業が参加している。渡航は難しいがオンラインが定着し、逆に海外が近くなったような現象が起きている。

―コロナ禍や物価高など逆風が続くが、2年連続で「増収増益率」トップの秘訣は

 基本的に地元企業の的確な経営戦略と営業努力によるものであり、そのなかで宮崎銀行は、コロナ前から継続してお客様のニーズに合致した資金繰りなどの提案や適切なコンサルティングを提供してきた。DX(デジタルトランスフォーメーション)やITなどにも積極的に取り組みつつ、地銀の良さである対面も重視している。担当者が足を運び、社長の悩みなど色々な話や相談を聞き、課題解決を図るスタンスが微力ながら取引先の増収増益に貢献できたのではないか。DX化を進める企業も当然あるが、ビジネスソリューション部を中心に適切なソリューションを提供するなど、今後も「増収増益率」ナンバー1を維持したいと思う。

(続く)

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2022年9月12日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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