宮崎銀行、取引先の「増収増益率ランキング」2年連続トップ(後編) 一身独立、統合せず単独で経営していく

―「コロナ破たん」が宮崎県は全国で最も少ない

 ゼロ・ゼロ融資やプロパー融資など資金繰り支援の徹底をしてきたことが大きいと考える。改善支援、業況悪化の予兆を捉える意味では、営業店を中心にお客様との相談対応を徹底することができている点が大きい。ただ、資金繰りの面ではゼロ・ゼロ融資で繋いでいる面はもちろんある。コロナ禍が長期化するなかで、いつかはそこが途絶える可能性もある。そうなった時に、条件変更等への柔軟な対応だけでなく、事業承継の問題ではM&Aに踏み切るなど、様々な選択肢がある。お客様との繋がりを手厚くしている点もコロナ破たん件数の少なさにつながっているのではないか。

―飼料・原油の高騰、人口減少など課題は多い

 飼料価格調整など国の支援はあるが、それでも厳しい状況が続いていると認識している。繋ぎ資金を支援する一方、デジタル化などのソリューションを提案し、支出の部分を減らすような支援が必要だと思っている。原油高だけではなく、宮崎県内の人口も減少しており、企業も問題に対しても何らかの対応が避けられない。DX化による経費削減など、銀行としても支援を手厚くすることが重要と捉えて対応している。

―繁華街での人流は。コロナ前に業況が戻ることは想定できるか

5月、6月は人流が戻ってきたという印象を持っていたが、第7波に突入した7月以降は足元の感染者数が増加してきた。BCP(事業継続計画)上の問題もあり、感染すると組織が機能しなくなるリスクもある。マスクも外せない状況下では、コロナ前に戻るのは当面、難しいのではないか。

―リスケは増えているのか

 ゼロ・ゼロ融資で、現在も据置き中が全体の4割程度だ。返済開始のピークが来年3月以降にくるので、そこが一つの山場になると思う。当然ながら返済開始で資金繰りが苦しくなる先も出てくるだろう。コロナ禍が収束しないなか、原材料高もありさらに経営が厳しくなることも予想される。企業経営支援室の活動、営業店への助言、中小企業活性化協議会の利用など早め早めの手当をやっていく。また、事業再構築など伴走型の継続支援が地銀には求められており、そうした体制はこれまでの実績で蓄積できている。

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‌2022年 都道府県別メインバンク取引社数ランキング

―九州は地銀の統合 が進むが、宮崎銀行のスタンスは

 「一身独立」という言葉をよく使うが、経営統合はせず、単独で経営していく方針だ。

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‌メインバンク取引先増収増益ランキング

―これからの取り組みや未来像は

 2年連続で1位を獲得でき、これまでの取り組みが着実に実を結んでいる。引き続き、お客様のニーズに応じた課題解決を図っていく。今後は、時流を捉えた新しい商品やお客様が使いやすい商品を組成していきたい。 対面が基本ではあるが、そこでは手の届かない非対面チャネルの強化も進めたい。(そうした取り組みで)お客様の利便性向上に努め、地域経済の発展に貢献していきたい。
 金融機関はデジタル化が進んでいるが、地方銀行は地域に店舗を持っており、デジタル化を進化させる一方、対面サービスも深化させる。それらを融合した「リアル店舗を持ったデジタルバンク」という方向性を宮崎銀行は示している。足を運ぶところにはちゃんと足を運び、「ファーストコールバンク」になる。かつ、お客様のDX化は積極的に進めていく。対面と非対面を織り交ぜたハイブリッド型の営業を進め、対話やご相談は面と向かい合い、ITを活用しながら効率化できるところは効率化を進める。これからもお客様との対話の時間を増やすことを目指していく。

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 宮崎銀行は取引先との対話を深め、課題解決への取り組みを、さらに進めている。取引先がコロナ禍で困難な状況にあるのは、日本全国で変わらない。その中で取引企業の増収増益率トップを2年連続で続けるのは画一的な支援だけでは難しい。
 今後、ゼロ・ゼロ融資の返済が本格化する。倒産や廃業の増加が懸念されるが、資金繰りの悪化した企業ほど金融機関に相談しにくく、深刻化して手遅れになることが多い。
 メインバンクは支援の一方で、時にドラスティックな厳しい助言や指摘も求められる。過剰債務に陥った企業に寄り添った伴走型支援と同時に、市場拡大を目指す企業、DXを進める企業など、企業のニーズは多様化が進む。宮崎銀行の積極的な支援への実効ある取り組みは、金融機関の支援のあり方のベストプラクティス(好事例)になるだろう。

宮崎銀行インタビュー担当者(敬称略)
経営企画部 副部長兼広報室長 湯川康市
営業統括部 企画役 長濱真司
営業統括部 調査役代理 日髙裕貴
審査部 企画役 鈴木伸介
ビジネスソリューション部 企画役 松葉康郎
国際部 調査役 金丸裕一郎

TSR注

 九州は金融再編がいち早く進んでいる。メインバンク社数では、ふくおかFG(福岡銀行、十八親和銀行、熊本銀行)が3万9,573社でメガバンクに続く全国5位。九州FG(肥後銀行、鹿児島銀行)は2万3,063社で10位。西日本FHD(西日本シティ銀行、長崎銀行)が2万980社で12位。山口FG(山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行)は1万8,809社で13位と続く。宮崎銀行は単独で9,295社(宮崎県外の企業含む)。九州では、佐賀銀行7,179社、大分銀行が8,486社と、各県で高シェアを保つ有力地銀が並ぶ。  

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2022年9月13日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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