「夫が家事をしないのはなぜ?」 専門家は「家事」の捉え方の違いを指摘

Park KSBアプリに寄せられた「ギモン」についてお伝えしていきます。家事に関する疑問の中で目立ったのが「夫婦での分担」にまつわるものでした。

「よその旦那さんはどれくらい家事に参加してる?」(倉敷市 しおちゃん 54歳)

こちらは夫婦がそれぞれ1日にどれほどの時間を仕事や育児、家事にあてているかを内閣府がまとめたものです。夫婦ともに正規雇用の子育て世帯の場合、子どもの年齢によって時間に変化はありますが、いずれも夫の方が「仕事」の時間が長く、妻の方が「家事」の時間が長くなっています。

この状況について内閣府「子ども・子育て会議」の委員などを務める徳倉康之さんに解説してもらいました。

「家事・育児・介護って無償労働って言うんですよ。この3つを総称してケアワークというんですけど、(日本は)性別役割分担性の意識が強いので、男性が働いて、女性が家事・育児・介護をする。その方が楽だからです、男性が」

1日に仕事や家事にかける時間には夫婦の間で差がありますが、「意識」の面では違った数字が出ています。

「家事について、配偶者でどのように分担したいと思うか?」という質問には、男女とも、「配偶者と半分ずつ分担したい」と希望する割合が、ほとんどの世代で半数を超え、男性の場合は若い世代ほどその割合が高くなりました。

「夫が家事をしないのはなぜ?」(高松市 ロータス 68歳)

このような声は少なくありません。徳倉さんが指摘するのは夫婦間での「家事」の捉え方の違いです。

「日本人の男性が一番している家事は何ですかと言うと、ごみ捨てって言うんですよ。玄関先に置かれて、分別されたゴミを集積所まで持っていくだけの、ただ運んでいるだけ。一番おいしいところの家事や育児をやっている傾向があるんですよ」

日本の共働き世帯は年々増加傾向です。1980年代後半「昭和の終わり」には共働き世帯が718万世帯でしたが、「平成」に入ると「妻が主婦の世帯」を上回り、2000年以降はその差がどんどん広がっていきました。

これは、女性の社会進出や結婚の価値観の変化、平均賃金が減るなどの社会変化が要因だと考えられています。しかし、徳倉さんは男性側の意識が社会の変化に追い付いていないと感じています。

「どんどん家計のあり方が変わってきて、女性が社会進出して女性も働いているんだけど、男性はそこのケアワークを担わず、女性は働きながらケアワークをする。女性が『無理ゲー』だというのはまさにそう。お互いに働き、お互いに家事、育児、介護をしていくっていうスタイルを取らないと、回っていかないでしょうね」

「夫婦の家事分担の方法」(岡山市 みかんゼリー 34歳)

「やっぱり、そもそもの夫婦それぞれの家事レベルが違うんですよ。ボタン押すだけで家事だと思ってる、それも広い意味では家事だと思うんですけど、意思決定と作業が何段階もあって、最後、単純作業だけ残っているっていう話ですよね」

徳倉さんは家事を「瞬間」ではなく「流れ」を見ることが大切だと考えています。必要なのは「分解」です。

例えば、ご飯を炊く場合「炊飯器のボタン」を押す前に・お米を買う・何合炊くか決める・お米を研ぐなどの過程があります。また、食べた後には「洗う」という作業も残っています。

「仕事でもそうですよね、最後プレゼンだけしてくださいなんてないじゃないですか。相手誰ですか、顧客誰ですか、テーマなんですか。やっぱりその過程を理解する必要があって、男性だけでなく女性も最初はそうなんですよ。勉強してトライしているかなんですよ」

先ほどの炊飯の場合は、「お米を買う」という作業は「妻」よりも「夫」が請け負った方が効率がよいかもしれません。

「5kg、10kg、20kgですよ。10kgって言ったら男性は片手で持てますよ、けど女性は大変かもしれない」

炊飯だけでなく洗濯や掃除などでも言えるのは「自分ができる部分にトライすること」です。

「分解をしていくと、ここまでは出来るな、全部は出来ないけど、ここまでの家事は出来るなっていうことに気づけば、すごく家事の分担はうまくいくと思います」

「社会人1年目」があるように家事にも「1年目」があります。仕事と同じように「成功体験」を重ねれば、新人も自信を深めて次への意欲がわいてくるかもしれません。

ただし、ここでも夫婦のコミュニケーションが重要です。

「不満点ももちろんあると思います。それすらも話し合ってじゃあきょう、じゃあ来週、来年、再来年、どういうふうに生活していきたいかを、きちんとお互いに話し合っていけば、自ずと分担だったり自分の役割というものが見えてくると思います。アプリとかパソコンとかもどんどんOSをバージョンアップするじゃないですか。働き方にしても、生活の仕方にしても、自分の中のOSをどんどん新しくしていく意識を夫婦で持っているところは、多分より楽しく、より楽に生活しているんじゃないかなと思います」

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