【独自取材】「助けられる可能性、十二分にあった」消防隊員殉職の飲食店火災から1か月 元消防局職員は「またか…2年で4人」=静岡・静岡市

消防隊員1人が亡くなった静岡県静岡市葵区の飲食店の火災から、9月13日で1か月が経ちました。隊員が火災に巻き込まれた原因が判然としない中、静岡市消防局の元職員がSBSの取材に応じ「助けられる可能性は十二分にあった」と話しました。

13日午前8時半、殉職した男性隊員(37)が所属していた駿河消防署では、黙とうが捧げられました。

<警察官>

「危ないんで下がってもらって」

8月13日、静岡市葵区呉服町の雑居ビル3階の飲食店で発生した火災。発生当初、静岡市消防局はケガ人や逃げ遅れはないとしていましたが、一転、火元の確認に建物内に入った男性隊員が巻き込まれた事を発表しました。

<静岡市消防局の元職員>

「まずは『またか』と。2年間で消防職員4人亡くなっている」

静岡市消防局の元職員の男性です。元職員が語ったのは、かつて所属していた組織の殉職者の多さです。

2020年7月、静岡県吉田町で起きた大規模な工場火災では、静岡市消防局の隊員3人が殉職しました。

消防庁によりますと、2016年から2020年までの5年間で火災に巻き込まれ殉職した消防職員は全国で9人。全国の消防職員は約17万人いるとされているので、1000人規模の静岡市消防局の職員が、最近2年間で4人殉職しているというのは異常事態です。

今回、注目されたのが屋内進入の際には通常、使用することになっている隊員同士をつなぐロープ。何か異変があった時の命綱ですが、今回は使われませんでした。

<静岡市消防局 伴野泰造警防部長>

「今回はある程度、床面付近での視界が確保できていたと解釈されるのでホースをロープの代用として進入し退室に利用していた」

火元の倉庫兼休憩室に向かって、亡くなった男性隊員を先頭に3人で進入。隊員をつなぐロープの代わりとしてホースを使いました。

<静岡市消防局の元職員>

「活動基準通りロープで繋がっていたら、その真ん中の隊員にテンションがかかってくる。何かあったと思ってすぐに引っ張って無線で男性隊員が様子がおかしいから増援隊とかがもうちょっとほしいといって助けることができた可能性は十二分にあったと思うので…」

静岡市消防局は、一定時間、隊員が動かなくなった際に異常を伝える携帯用の警報器を男性隊員が着用していたとしていますが、当時、作動していたかどうかは「調査中」としています。

<静岡市消防局 伴野泰造警防部長>

「現時点では活動に対しては問題はなかったと理解しております」

この発言にも、元職員は違和感を覚えたといいます。

<静岡市消防局の元職員>

「亡くなっているのに問題点はどこだったの、活動上は問題なかった、では、なんであの隊員は亡くなっちゃったの?って。今までやってきたからというのが結構強いんですよ、組織的に。今までやってきたことだからやろうねと。今回を機にそこを改善すればいいんじゃないのかなとは思う」

37歳の消防隊員が殉職した火災から1か月。静岡市などは9月中に事故調査委員会を設置したいとしていますが、原因の究明にはまだ時間が掛かりそうです。亡くなった隊員の消防葬は、9月28日午後から静岡市民文化会館で実施されます。

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