悩み共有“ピアサポート”知って 片岡さん夫妻、精神障害テーマに絵本制作中 長崎・大村

精神障害者のピアサポート活動や絵本をPRする片岡さん夫妻=大村市役所

 病気や障害などの当事者同士が悩みや経験を語り合って共有し、互いを支え合うピアサポート。精神障害があり、長崎県大村市内の当事者会に所属する片岡史和さん(49)、洋子さん(50)夫妻は、障害やピアサポート活動を題材にした絵本「ドーナツのなやみごと」の制作に取り組んでいる。史和さんは「ピアサポートは仲間同士の『つながり』であり、『居場所』でもある。(障害という)弱さを絆に変えていきたい」と話している。
 感受性が人一倍強く、感情の起伏が激しい「情緒不安定性パーソナリティー障害」を抱える史和さんは、高校生の時に発症。「障害があるから働けない」などと一時は引きこもりの状態だったが、知人の励ましを受け「自分のことは自分でやりたい」と考えるようになったという。
 15年ほど前に当事者会の「おおむら麦の会」に入会。その後、一般の人も参加する「ピアサポートみなと」の立ち上げにも携わった。現在は「麦の会」で会長、「みなと」で副代表を務めている。
 両会は月に数回開催し、コロナ禍以降はオンラインでも実施。「つらかったこと」や「夢」といったテーマに沿って経験や悩み、考えを語り合うなどの活動に取り組んでいる。参加者同士での「傾聴」に重点を置いており「同じ境遇の仲間に励まされることも多い」(史和さん)という。

片岡さん夫妻が制作している「ドーナツのなやみごと」(パパゲーノ提供)

 絵本はこうした活動の中で、障害に対する考え方が変わっていったという史和さんの経験が基となっている。自分の「穴」にコンプレックスを抱くドーナツが旅をしていく中で、穴に対する考え方を変えていくというストーリー。穴を障害に見立てており、史和さんは「自分もドーナツも障害という穴を無くすことはできないけど、それを通じて人とつながることができる。そんな考え方の変化を描きたかった」と語る。
 挿絵は妻の洋子さんが担当。統合失調症がある洋子さんは、精神疾患当事者のリカバリーストーリーを題材としたアート制作を手がけるパパゲーノ(東京)を通じ、別の絵本の制作にも携わった経験がある。今回の作品では、鮮やかな背景や温かみを感じる登場人物で物語を彩っている。
 制作資金は、クラウドファンディング「GoodMorning」で募っている。目標額は20万円で、期限は今月末まで。史和さんは「精神障害者にとってピアサポートは生きる希望につながるが、知らない人も多い。絵本をきっかけに障害について知ってもらうと同時に、活動に参加する人も増えれば」と話した。


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