2022年8月の後継者不在による『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)は、27件(前年同月比6.8%減)だった。8月としては、3年ぶりに前年同月を下回った。ただ、2022年に入り、前年同月を下回ったのは6月と8月の2カ月で、1-8月累計は276件(前年同期比15.9%増、前年同期238件)と、年間で最多の2021年(381件)を超える可能性も出てきた。
要因別は、代表者の「死亡」が14件(構成比51.8%)、「体調不良」が8件(同29.6%)で、この2要因だけで『後継者難』倒産の8割(同81.4%)を占めた。
産業別は、最多が建設業(前年同月比133.3%増)とサービス業他(同±0.0%)の各7件で、以下、卸売業5件(同28.5%減)、製造業3件(同40.0%減)と続く。
資本金別は、1千万円未満が16件(前年同月比14.2%増、構成比59.2%)と約6割を占めた。一方、5千万円以上1億円未満が4年ぶり、1億円以上が3年ぶりに、それぞれ発生がなかった。
経営者の高齢化が進み、2021年の経営者の平均年齢は62.77歳(前年62.49歳)に上昇している。後継者の育成や事業承継への対応は、事業規模を問わず重い経営課題に浮上している。2022年春以降、企業倒産は低水準ながら底打ちから増勢局面に転じ、後継者不在の企業は事業継続だけでなく、廃業やM&A、事業譲渡など、多様な支援策が必要になっている。
- ※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2022年8月の『後継者難』倒産(負債1,000万円以上)を抽出し、分析した。
件数27件、8月としては3年ぶりに前年同月を下回る
2022年8月の『後継者難』倒産は27件(前年同月比6.8%減)で、8月としては3年ぶりに前年同月を下回った。また、負債1,000万円以上の倒産全体の5.4%と、前年同月の6.2%より0.8ポイント低下した。
コロナ禍が長期化するなかで、資金繰り支援策などの効果が薄れつつある。企業倒産は低水準ながら4月から5カ月連続で前年同月を上回り、底打ちから増勢への潮目の変化が強まっている。そうしたなか、代表者の高齢化や後継者不在に起因する『後継者難』倒産の構成比は高止まりの状況が続いている。
ここ数年、金融機関や企業では財務内容だけでなく、取引先の代表者の年齢や後継者(候補)の有無も与信での判断材料の一つとしている。
ただ、後継者問題は、資産背景がぜい弱な中小・零細企業では独自に対応することは難しく、企業に寄り添った支援体制の確立も急がれる。
【要因別】「死亡」と「体調不良」で8割
要因別は、最多が代表者などの「死亡」の14件(前年同月比30.0%減)で、8月としては3年ぶりに前年同月を下回った。『後継者難』倒産に占める構成比は51.8%で、前年同月の68.9%より17.1ポイント低下。また、「体調不良」が8件(前年同月比33.3%増、構成比29.6%)で、4年ぶりに前年同月を上回った。
代表者などの「死亡」と「体調不良」は合計22件(前年同月比15.3%減、前年同月26件)で、3年ぶりに前年同月を下回った。『後継者難』倒産に占める構成比は81.4%で、前年同月の89.6%より8.2ポイント低下した。
このほか、「高齢」が5件(前年同月比66.6%増)で、3年連続で前年同月を上回った。
代表者の高齢化が進み、代表者の「死亡」や「体調不良」は事業を継続していく上で重大なリスクになっている。
【産業別】10産業のうち、2産業が増加
産業別は、10産業のうち、農・林・漁・鉱業、建設業の2産業で前年同月を上回った。
農・林・漁・鉱業が2件(前年同月ゼロ)で、5年ぶりに発生した。
また、建設業が7件(前年同月比133.3%増、前年同月3件)で、3年ぶりに前年同月を上回った。また、8月としては2015年、17年、19年、20年に並び、2013年以降では最多を記録した。
一方、減少は5産業だった。製造業が3件(前年同月比40.0%減)、不動産業が1件(同66.6%減)で3年ぶり、卸売業が5件(同28.5%減)、小売業が1件(同50.0%減)、情報通信業がゼロ(前年同月1件)が2年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。
サービス業他が7件、運輸業が1件で、それぞれ前年同月と同件数だった。また、金融・保険業は、8月としては2013年以降、発生はない。
業種別では、土木工事業、ガラス工事業、はつり・解体工事業、一般電気工事業、道路標識設置工事業、綿・スフ織物業、各種機械・同部分品製造修理業、一般乗用旅客自動車運送業、菓子・パン類卸売業、プラスチック卸売業、荒物卸売業、医薬品卸売業、電気機械器具小売業、法律事務所、不動産鑑定業、測量業、楽団,舞踏団、無床診療所などが各1件発生した。
【形態別】破産が100.0%
形態別は、「破産」が前年同月と同件数の27件(前年同月比±0.0%)だった。『後継者難』倒産に占める構成比は、8月としては2013年以降、初めて100.0%になった。
業績回復が遅れる企業では、後継者の育成や事業承継の準備まで手が回っていない。代表者に不測の事態が生じた場合、消滅型の「破産」を選択するケースがほとんど。
【資本金別】1千万円未満が6割
資本金別は、「1千万円未満」が16件(前年同月比14.2%増、構成比59.2%)で、3年連続で前年同月を上回った。一方、「1千万円以上5千万円未満」が11件(前年同月比15.3%減)で、3年ぶりに前年同月を下回った。
「5千万円以上1億円未満」は4年ぶり、「1億円以上」は3年ぶりに、それぞれ発生がなかった。