原点は那覇の珠算塾 金城翼さん 数学奨励賞 県出身、26歳 計算習熟で「勉強楽しく」

 沖縄県出身で東京大大学院博士課程2年の金城翼(たすき)さん(26)=東京都在住=が14日、将来性ある30歳以下の数学者に贈られる「日本数学会賞建部賢弘奨励賞」を受賞した。受賞内容は、方程式で定義される図形を調べる分野「代数幾何学」に関する研究。

 金城さんは両親とも県出身だが、父親が転勤を伴う仕事のため、県内で生活したのは小学校2年まで。通っていた那覇市立泊小学校の近くにある田仲珠算塾で数学の面白さに出合った。「そろばんで計算が速くなるにつれ、問題が簡単に解けるようになり、勉強が楽しくなった」という。

 沖縄を離れて大阪、兵庫、福岡へと引っ越したが、そろばんを基礎として数学の勉強は続けた。福岡大付属大濠高時代は「国際数学オリンピック」に出場し、銀メダルを獲得。めきめきと力を付け、東京大学、同大学院へと進学した。

 今月で大学院博士課程を終え、半年間は英オックスフォード大で研究することが決まっているという。

 珠算塾で金城さんを教えていた田仲康憲塾長(79)は「1回教えるだけで全部を理解する、聖徳太子のような子だった。記憶力は抜群だし、元気いっぱいだった」と懐古し、自分のことのように受賞を喜んだ。

 金城さんは「過ごした期間は短いが、親戚はみんな沖縄の人なので、沖縄出身というアイデンティティーがある」と説明。「素晴らしい賞をもらえたのは、両親やそろばんの先生がいたおかげ。いろんな人に感謝したい」と話した。

 (稲福政俊)

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