【ゴルフダイジェスト・オンライン】好調なレッスン事業 練習場をクラブ風に装飾

東京都千代田区内のGolfTEC

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)<3319>が、手がけるゴルフレッスン事業が好調だ。

2018年に子会社化した米国のゴルフレッスンチェーン大手GolfTEC Enterprises, LLC(コロラド州)が、のれん償却前の営業利益で黒字化したほか、日本国内で展開しているGolfTECのレッスン事業の売上高が2021年12月期に前年度比46%もの大幅な増収となった。

日米ともに、コロナ禍の中、ゴルフに関心が集まり、20代の若いゴルファーが増加していることから、レッスン需要が拡大していることが背景にある。

GolfTEC は2022年8月に、米国のSkyTrakグループから一般ゴルファー向けゴルフ弾道測定器SkyTrak事業を買収した。同事業をレッスン事業に取り込み、米国での基盤を強化するのが狙いで、うまく軌道に乗れば日本の直営店での展開も見込める。

M&Aが同社の成長に大きな役割を果たそうとしている。

レッスン直営店の出店を加速

GolfTECは米国のほかにも、カナダや東南アジアなど6カ国で235店舗を運営しており、スイングのデータや、ボール、ゴルフクラブのデータ、ユーザーの個人データなどを基に、各人に合ったレッスンを行うスタイルが支持を得た形だ。

一方、国内のGolfTECの直営店は、2020年に116店だったのが、2021年12月期には新規出店の12店とフランチャーズ店の買戻しによる16店を加えた144店に増加した。

店舗網の拡大が、大幅な増収の要因で、同社では新規出店とフランチャイズ店の買戻しを引き続き推進していくことにしており、さらなる増収を目指す計画だ。

オプティモーションという新しいテクノロジーの導入も顧客満足度の向上に役立った。オプティモーションは、スイング映像からAI(人工知能)で骨格情報を推定し、3次元でスイングを解析する技術で、これまで体への装着が必要だったセンサーなどが不要になったため、測定装置の影響を受けない実際のスイングを解析できるようになった。

こうした取り組みの成果が、数字となって現れたのが2021年12月期だったわけだ。


2年連続で過去最高を更新

2022年は、これにゴルフ弾道測定器SkyTrak事業が加わる。SkyTrakは、ゴルフボールの飛球データとボールの計測データを正確に収集することで弾道を可視化する装置で、一人での練習のほか、数千のゴルフコースでのシミュレーションラウンドが可能なため仲間と楽しみながら競い合うこともできる。

米国ではゴルフ場以外でゴルフを楽しむゴルファーが増えており、自宅や練習場で使用できるSkyTrakには成長の可能性があるという。

同社ではSkyTrak利用者にGolfTECのレッスンを案内すると同時に、GolfTECのレッスン受講者に対しSkyTrakを売り込むことでシナジーを生み出す計画だ。

GolfTECは900人以上のコーチを抱えており、年間のレッスン回数は150万回以上。受講者は65万人に達しており、2021年度の売上高は1億700万ドル(約154億円)だった。

SkyTrakの会員数は4万5000人で、2021年度の売上高4600万ドル(約66億円)だった。両者が連携することで、生み出されるメリットは決して小さくはない。

GolfTECでは「SkyTrakブランドとの融合によりゴルフレッスンの世界的リーダーとしてのブランド力の認知拡大を実現する」としている。

SkyTrak事業の譲受金額は6500万ドル(約93億円)で、GDOでは、この事業譲受資金と関連する諸費用、将来的な成長などのために、約156億円を借り入れた。

このM&Aと借り入れが2022年12月期の業績に与える影響については「精査中」として詳細を明らかにしていない。

その2022年12月期は売上高439億円(前年度比10.9%増)、営業利益21億円(同23.0%増)、経常利益21億円(同22.4%増)、当期利益19億円(同83.4%増)を見込んでいる。

前年の2021年12月期は、ゴルフレッスン事業が好調に推移したことなどもあり、売上高は2ケタの増収となり、利益は全段階で過去最高を更新した。2022年はこれをさらに上回り、2年連続で過去最高を更新する見通しだ。

さらに、借入金による金利負担は増すものの、期の途中からではあるが、SkyTrakの収益が加わるため、業績の予想数字が上振れする可能性は高い。


初心者の不安を解消

GDOは2000年に設立し、ゴルフ場オンライン予約サービスを開始した。翌年の2001年にはゴルフ用品販売サイトを立ち上げ、さらに3年後の2004年に東証マザーズに上場、2015年には東証1部に昇格した。

M&Aについては、2007年に、中古ゴルフクラブの買取り・販売を手がけるエイコーを子会社化したのを皮切りに、2010年にソフトウエア開発会社のインサイトを子会社化、2016年に、ジュニア専門のゴルフスクールのキッズゴルフを子会社化した。

この後に2018年のGolfTEC、2022年のSkyTrakと続くわけで、この2件のM&Aで、ゴルフレッスンという新しい事業領域を確立したことになる。

同社は新しいゴルフの形を提案している。一つは初心者の不安を解消するための取り組みで、ゴルフ経験の豊富なスタッフが帯同し、後続を気兼ねせずに済む最終組でラウンドするというもの。ラウンド中にルールやマナーなどについても学ぶことができるという。

もう一つは、打席に設置した対話型の画⾯を介して、ショットのリプレイ映像や統計データなどが得られるトップトレーサーを活用するもの。

同設備を設置しているゴルフ練習場のワンフロア―を貸し切り、クラブ(飲食や音楽などを楽しむ場所)風の装飾を施しディスクジョッキーを招くなどして、音楽と食事を楽しみながらゴルフで遊ぶことができるようにする。

いずれも若いゴルファーを生み出し、定着させるための施策で、レッスンとの相性も悪くない。次のM&Aはこうした分野で実現する可能性は低くはなさそうだ。

文:M&A Online編集部

M&A Online編集部

M&Aをもっと身近に。

これが、M&A(企業の合併・買収)とM&Aにまつわる身近な情報をM&Aの専門家だけでなく、広く一般の方々にも提供するメディア、M&A Onlineのメッセージです。私たちに大切なことは、M&Aに対する正しい知識と判断基準を持つことだと考えています。M&A Onlineは、広くM&Aの情報を収集・発信しながら、日本の産業がM&Aによって力強さを増していく姿を、読者の皆様と一緒にしっかりと見届けていきたいと考えています。

© 株式会社ストライク