小雪、全盲ろうとなる息子と困難を乗り越えていく姿 実話を元にした「桜色の風が咲く」予告

11月4日より劇場公開される、9歳で失明、18歳で聴力を失いながらも世界で初めて盲ろう者の大学教授となり、東京大学の教授として教鞭をとっている福島智さんの、幼少期から大学受験までの姿を描いた映画「桜色の風が咲く」の、予告編が公開された。

幼少期に右目の視力を失いながらも、3人兄弟の末っ子として天真らんまんに育つ智と母・令子のやりとりはユーモアにあふれ、楽しい日々を過ごしていた。予告編では、「智、宿題終わったの?」「半分やったで」「ダメでしょ半分じゃ」「僕は片目だから半分でええねん」という母とのやりとりのあと、元気よく遊びに出かける智の姿や、草花と触れ合い、海辺で過ごし、9歳で失明してしまう智を皆で支えていく家族の様子が映し出される。そして、高校生となり家族の元を離れ、寮生活をスタートさせる智は、「僕には耳がある、だから大丈夫や」と語り、心配な様子の母・令子を安心させる。

ある日智が実家に帰省した時、令子は智の耳の状態が良くないことに気づく。聴力をも失うことで智はまるで宇宙に放り出されたような孤独を感じる。そこから、母・令子と智の努力の日々がはじまる。一緒に走って運動療法に励み、令子は食事療法にも取り組み、さらにある日、智の指に、点字を打つように言葉を伝えると「指点字なら読める。これならわかるわ」と感謝を伝える智。そして「僕は考えることができる。言葉がある。僕がこういう状態なったのは、こういう僕でないとできないことがあるからだ」という智の言葉や、「私たち家族は、智にたくさん教えられてきたんだ」という母・令子の言葉が胸を打つ予告編となっている。

本作のモデルである、東京大学先端科学技術研究センターバリアフリー分野の福島智教授のコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】
私・福島智は今、59歳。母・令子は今、89歳。私は東京で妻と、母は神戸で一人で、おかげさまでまずまず元気にすごしています。この映画は、私のごく幼いころから、20歳ころまでの母と私の歩みを描いた作品です。シナリオを20バージョン以上も拝見し、いろいろと感想や意見をお伝えしました。また、母・令子役の小雪さんや智役の田中さんたちとも直接お会いして、雑談もまじえながら、点字や指点字の練習を一緒にしました。なので、私の心の中にはこの映画が鮮やかに息づいています。
実話に基づいているとはいえ映画ですので、さまざまな脚色やフィクションは当然含まれています。それでも、幼いころの義眼のエピソードや運動療法に取り組んでいた時のエピソードなど、事実に基づいていることも少なくありません。中でも、1981年の3月のある朝、「病院に遅れるで」と、文句を言いに台所に行った私に、母が突然、両手の指で私の指に妙なことをし始めたこと、つまり、「指点字」の始まりの場面は、現実と映画がそのまま連続しているように感じました。
ただし、小雪さんは母よりも指が細く、背がずっと高い。セリフもすっきりした東京言葉で、関西のおばちゃん言葉ではない。だけど、共通点もあります。それは、「生きるパワーがある」ということです。

【作品情報】
桜色の風が咲く
2022年11月4日(金)シネスイッチ銀座、ユーロスペース 他全国順次ロードショー
配給:ギャガ
©THRONE / KARAVAN Pictures

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