オンリーワンの車両「新幹線かもめ」横顔 西九州新幹線9月23日開業

走行試験中の西九州新幹線かもめ。白地にJR九州のコーポレートカラーである鮮やかな赤があしらわれた(同社提供)

 西九州新幹線かもめは、東海道・山陽新幹線に約2年前導入された最新鋭車両「N700S」をカスタマイズした。
 それを担ったのは、JR九州の特急かもめや観光列車などを多数手がけてきた工業デザイナー、水戸岡鋭治氏。「既存の形を変えないという制約があった」中で、知恵とアイデアにより「九州らしいオンリーワンの車両」に仕上げた。

新幹線かもめの誕生を市民が「ハッピーバースデー」を歌って祝福するイベントが新幹線各駅であり、車内が公開された。自由席は5列、座席カバーはやまぶき色で明るい雰囲気となっている=長崎駅

 東海道・山陽新幹線の車両とほぼ同じ仕様だが、大きく違うのは指定席の座席。木材を多用し、車両ごとに座面の絵柄を変えた。床や窓のブラインドにも唐草などの模様を施した。自由席は東海道・山陽と同じ形だが色を変更。先頭部分の外装は“目”“鼻”を分かりやすくし、子どもが描きやすいような“顔”にしたという。

3号車の多目的室には折り畳み式のベッドを用意。気分が悪くなった際の休憩や授乳にも利用できる
木材を多用した指定席の座席。背もたれと座面が連動して動くリクライニングを採用した。自由席も含め全座席にパソコンやスマートフォンを充電できるモバイル用コンセントを搭載。無料Wi―Fiも完備している

 1編成6両、指定席(1~3号車)と自由席(4~6号車)で計391席。トイレは1、3、5号車に計7カ所。3号車には車いすスペースと多機能トイレもある。
 N700Sが目指したのは「上質な乗り心地」。一部の車両に制振制御装置を入れ、従来の新幹線と比べ揺れを大幅に減少。座席のリクライニング機能も改善し、快適性が向上した。従来型の照明は天井中央にあるが、車内を視覚的に広く感じさせるため間接照明で温かみのある光にした。
 最高時速は東海道285キロ、山陽300キロに対し、西九州は260キロに抑えて設定している。JR九州によると、1編成16両の東海道は動力の無い車両も含めているが、西九州はより勾配があるため、1編成6両全てを動力車にした。蓄電池を搭載し、災害などで停電した際も自力走行し乗客を避難場所まで運べる。駅ごとに発車メロディーを変えるなど遊び心も取り入れている。

 西九州新幹線かもめは武雄温泉-長崎を最速23分で結ぶ。博多-長崎は武雄温泉駅ホームでの対面乗り換えを含み最速1時間20分で、現在の特急かもめより30分短縮される。


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