<秒読み 西九州新幹線開業> 『県都』変革 人流拡大へ続く再開発

JR長崎駅(右)の東口では新駅ビルなどの建設が進む=長崎市尾上町

 西九州新幹線の開業は間もなくだが、長崎市のJR長崎駅周辺の再開発はしばらく続く。高架化で約150メートル西に移転した駅舎や線路の跡地はもちろん、改札口から北へ徒歩10分の場所では通販大手ジャパネットホールディングス(佐世保市)の「長崎スタジアムシティプロジェクト」で巨大クレーンが動いている。「100年に1度の変革」によって県都は生まれ変わりつつある。
 日本政策投資銀行九州支店によると、本県の民間設備投資計画は2021年度が約3倍、22年度は1.6倍といずれも前年度実績を大きく上回った。伸び率は九州7県で突出。特に建設や運輸など非製造業が顕著で、駅周辺の動きが寄与したとみられる。
 駅周辺19.2ヘクタールの区画整理事業は市が主導。「国際観光都市の玄関口にふさわしい拠点」を25年までに完成させる。
 昨年11月、市が216億円を投じた「出島メッセ長崎」が隣接の外資系高級ホテル「ヒルトン長崎」と同時開業し、駅西口と直結。国際会議など大規模なコンベンションを誘致し交流人口を拡大する上で核となる。市によると、1年目は新型コロナウイルス禍で千人以上の学会は6件にとどまったが、2年目は3倍近くになる見込み。担当者は「新幹線で施設のポテンシャルが高まる」と期待する。
 駅東口ではJR九州の新駅ビルが23年秋の開業を目指す。13階建て。既存のアミュプラザ長崎などと合わせた商業フロアの延べ床面積は計8万4千平方メートルに広がる。上階には「長崎マリオットホテル」も入る。
 11年に九州新幹線が全線開業した鹿児島市でも、鹿児島中央駅周辺の再開発が進み、市全体の小売販売額に占める割合が市中心部の天文館とは対照的に上昇。地価もまだ天文館に届かないものの、上昇率では上回る傾向にある。
 同様にアーケードがある長崎市中心街では「空洞化」への警戒感が根強い。市商店街連合会の本田時夫会長は「長崎駅を降りた人に足を伸ばしてもらえる仕掛けが必要」と2次交通などによる動線確保を重視する。
 だが駅舎の移転で、国道にある路線バスや路面電車停留所へのアクセスは不便になった。市は開業までに駅東口に交通広場を仮設し改善を急ぐ。駅と中心街の間にある県庁舎跡地は10月にも広場として暫定供用されるが、本格整備はまだ先。県担当者は「土地の歴史性や周辺開発との連動を踏まえ検討する」という。
 日銀長崎支店の鴛海健起支店長は「駅周辺再開発のようなしつらえも大切だが、観光ルートなどのソフト面をうまく磨き上げ、レベルアップすることが長崎経済全体の底上げにつながる」と指摘する。


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