投資の神様・バフェットの会社が無配当の理由、高配当と優待の落とし穴とは?

投資にはさまざまなスタイルがあり、その目的やフェーズによってスタイルを使い分けることが、投資戦略において重要な要素のひとつになります。

登録者数10万人超えのYouTube・聞いてわかる投資本要約チャンネルを運営するタザキ( @tazaki_youtube )氏の著書『お金の名著200冊を読破してわかった!投資の正解』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部を抜粋・編集して投資によるリターンの種類について解説します。


投資フェーズによって収益の源を変える

投資によるリターンは大きく2種類あります。値上がりによる売却益であるキャピタルゲインと、保有中にもらえる利子や配当といったインカムゲインです。どちらも投資家に報いている点は同じですが、形式が異なります。

キャピタルゲインは、長期的には企業の本質的価値の増大によってもたらされます。投資家からすれば、配当でもらってしまえば、せいぜい2、3%のリターンです。成長期の会社なら、会社を大きくするための設備投資や人材雇用に投資したほうが、将来的に数百%のキャピタルゲインで返ってくる可能性があります。

一方、すでに大きくなってしまった会社は、成長の余地があまりありません。受け身の表現になりますが、キャピタルゲインを出せないからこそ、高い配当で投資家に報いなければなりません。実際、高配当で有名な大企業の業績や株価は、これから10倍になるとは考えにくいでしょう。そうなると、高い配当や優待を駆使して投資家に買ってもらうしかないのです。

これらは一長一短なのですが、投資のフェーズで向き不向きがあります。

「資産形成期」にはキャピタルゲインを、「取り崩し期」にはインカムゲインを重視するのが良いでしょう。

資産形成期とは、投資を生活費の頼りに取り崩す必要がなく、資産を大きくすることを目的とする時期をさします。このようなまだ資産が小さい時期には、下手にリターンを現金で受け取ることはせず、再投資に回して複利運用していったほうが、将来的に大きな資産を築くことができます。配当で受け取ってから、それを再投資に回すことももちろんできますが、それでは税金面で少し損をしてしまいます。

「税引き後の配当を再投資に回そうが、先に再投資して最後に一気に税金を取られようが、結局同じなんじゃないの?」という声が聞こえてきそうですが、実は後者のほうが節税になります。もちろん、長期的に税率が変わらなければ、の話です。

ちょっとシミュレーションをしてみましょう。元本を100万円、毎年10%のリターンで、再投資するファンドAで30年間運用して利益が出たことで最終的に20%を課税すると、平均リターンは約9.2%になります。一方、配当を都度課税し、税引き後の金額を再投資し続けるファンドBの平均リターンは約8%になります。

つまり、税金は後回しにしたほうが、資産形成の効率が良くなるのです。キャピタルゲインを狙う投資では、このような「課税繰延効果」があります。

また、インカムゲインとして投資家に資金を吐き出している株式は、自社の成長のためにお金を投じていないので、成長性が乏しい可能性があります。安定感はあるかもしれませんが、資産を「形成」するには向いていません。

これらの理由から、投資の神様、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイも無配にしています。配当を出して税金を取られるくらいなら、事業拡大の資金に回したほうが、投資家のためになるということですね。世界一、投資家の目線を理解した経営者ともいえるバフェット氏が、いかにキャピタルゲインを重視しているかがわかります。これは片腕であるバークシャー・ハサウェイ副会長のチャーリー・マンガー氏の影響もあるのかもしれません。

インカムゲインの注意点

一方で、年間数%のインカムゲインは、資産をこれからつくるにはもの足りませんが、すでに大きくなった資産を運用していくには、十分な数字だったりします。インカムゲインを頼りにする投資は、投資額が大きければ大きいほど向いているのです。

仮に配当利回りが4%だとすると、投資額100万円なら、年間4万円にしかなりません。確実性があるといっても、これでは子どものお小遣いです。しかし投資額5000万円なら、年間200万円。田舎で1年間、一人暮らしの生活なら送れそうです。

また、配当はタイミングを気にする必要がないというメリットもあります。キャピタルゲインによる収益はどこかで銘柄を売却しなければ上がらないので、タイミングを気にせざるを得ません。その点、配当は期日になれば決まった金額が振り込まれます。間違ったタイミングで取り崩しをしてしまう心配もありません。心を穏やかに過ごせるということは、投資における一つの重要指標です。

高配当の株式投資といえば、個別銘柄や米国ETFが人気です。国内の個別銘柄なら、配当控除を使えるので、税金を通常の約20%から5%までおさえられることがあります。これは非常に大きな差です。

米国ETFは、世界一のアメリカ経済に支えられているので、今後も長期的には堅調な成績が期待できます。しかし、前述の配当控除が使えません。さらに、米国でも税金がかかり二重課税となります。米国の分は外国税額控除で取り戻せますが、海外ETFは配当控除が使えないので、20.315%まで戻すのがやっとです。それでも米国ETFが良いという人もいますし、情報も得やすく税金も安い日本の高配当株が良いという人もいます。
これは個人の好みや、実際に買ってみて合うほうを選べば良いでしょう。そうやって自分に合うスタイルを見つけていくのも、投資の面白さです。

ただし、日本の高配当株を探すときはいくつか注意が必要です。そもそも成長性に乏しい可能性があることは前述しましたが、その上無理をして高配当を維持している場合は、減配リスクがあるので危険です。

それは「配当性向」という指標に現れます。配当は、いろいろな経費を差し引いた当期純利益からどれだけ配当に回しているかを示す指標です。配当性向が高いというのは、配当で投資家に還元しようとする意思が経営層にあると考えれば、プラスに捉えられます。

しかし、デメリットもあります。高ければ高いほど、減配リスクが高まるからです。減配はキャピタルロス(値下がり損)にもつながります。利益は毎年約束されたものではありません。コロナショックのあった2020年のように、想像もしていないことが起きれば、利益を維持できず、減配せざるを得ない状況になります。高配当を目当てに投資している投資家からは失望売りが出て、それによる株価の下落を見越した売りも重なるかもしれません。

「高配当」というと聞こえは良いのですが、維持できなくなる危険性があることを念頭に置いておくべきです。「多少値下がりしても配当があるから結局プラス」という考えは危険です。そこからさらに、配当の税金を考慮してもプラスになっていますか? マイナスとまではいかなくても、さらにリターンが減ってはいませんか? まとめると、たとえインカム重視であろうとも、値上がり益を捨てていいということではないのです。

株主優待の有無で選んではいけない

それは優待銘柄も同じです。「初心者にとってのとっつきやすさ」や、「優待が届いたときの楽しさ」という面では良いと思います。しかし私の結論としては、あくまでもオマケのクーポン券のような認識でいるべきだと思います。それ目当てで株を買うのは、最善ではありません。

そもそも、株の優待は日本独自の文化で、外国にはありません。日本マクドナルドホールディングス(2702)にはお食事券の優待がありますが、別法人の米国マクドナルド社(MCD)を買っても優待はもらえません。

世界基準では、優待を株のリターンとは考えていません。「でも、ここは日本なのだから、優待が拡充されたりしたら皆が買うと周りも考え、株価が上がるのではないか」と思う方もいるかもしれません。しかし残念ながら、日本株の売買シェアは6、7割が外国人投資家です。保有しているのは7割が日本人ですが、活発に売買されなければ株価は動きません。動きに関わる「売買」の多くを握っているのは外国人なのです。

国外に住む外国人からしたら、優待なんてどうせ使えないのだから価値はありません。そのため、優待が理由で多少は株価が上がることはあるかもしれませんが、インパクトは小さいでしょう。そして、配当の場合と同じく、改悪されたりなくなったりするリスクにも気をつけなければなりません。

まとめると、若く時間もある「資産形成期」には、キャピタルゲインを伸ばすのが最優先です。目標金額に近づいてきたり、引退時期が近い、またはすでに引退しているような「使うこと」も考え始めた「取り崩し期」の人は、インカムゲインがあると精神的に楽になれます。ただし、無理な配当性向などになっていないか、キャピタルロスのリスクが隠れていないか、には注意が必要です。

インカムのある資産、ない資産の比率は0か100かの話ではありません。投資を始めた年齢、取り崩し始める時期、リスク許容度や家族構成などのパーソナルな要因によっても比率は変わると思います。

また、資産形成期はインデックス投資信託などで再投資運用をし、引退時期が近づいてきたら高配当資産に切り替えるなどのリレー方式をとる個人投資家も少なくありません。
自分の目標や性格と照らし合わせることが大事です。

著者:タザキ

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