火にかけた黒い器、フタを開けると…
<尾崎文哉ディレクター>
「うわぁ、良い香りですね。甘くてスモーキーな香りがマスクをしていてもストレートに感じられる」
香りの正体はこの燻製チップ「higure」です。チップは、サクラ・ナラ・クルミの3種類から選べます。
「higure」を作るのは、静岡県静岡市の家具店、金鱗です。創業75年。木材にこだわったオーダーメイドの家具が人気のお店です。家具は店の工場で、一つ一つ手作りしています。
家具を作る上で大切になるのがこちらの作業。木の表面をなめらかにし、厚さを均一にしていきます。このときに出てしまうのが、木のくずです。
<金鱗 石川智規さん>
「こちらが先ほど削った木のカスを袋に集めたもの。一週間、10日くらいでこれぐらい出てしまう。今までは酪農の方が持っていってくれて、いい循環になっていた」
しかし、酪農家が減ったことで木のくずが使われることは少なくなりました。将来的には産業廃棄物になってしまう可能性もあります。
<金鱗 石川智規さん>
「林業も含めて、気を使って家具を作っている人たちも年々減っている。やっぱり継続性ですよね。家具屋としての継続性もそうだし、材木を買わせていただいてる立場としての継続性も、材木屋さんが仕事を続けていってもらえる継続性もそうだし。一番大事だと思う。捨てることなく。一番端の材料もいかに何かに使えないかなと考えながら」
そこで2022年、燻製チップとして販売しました。
<金鱗 石川智規さん>
「ナラもクルミも使っているが、昔から燻製のチップとしてたくさん使われていた素材なので、ものすごく美味しいものが出来上がるかなと」
燻製チップ「higure」を使っているフレンチレストラン、SINQです。こちらでは魚や肉だけではなく、フルーツも燻製にしています。
<SINQ 保崎真吾シェフ>
「燻製がかかることによって、素材のボリュームが出る。それによって食べ応えが出る」
「higure」は、普通のチップと比べて燻製の匂いがしつこく残らず、香りもさわやかだといいます。
<SINQ 保崎真吾シェフ>
「シンプルに素材を出しつつ、何かを加える時に使うと、普段味わえない味や香りになる」
フレンチレストランのシェフも太鼓判を押す燻製チップ。自宅でも簡単に使えます。まず燻製器の底にチップをひきます。食材を入れて、あとはコンロなどの火にかけるだけ。待つこと10分。燻製の出来上がりです。サクラのチップでスモークされた食材は、ほんのり甘みがかった香ばしい味わいに。
<金鱗 石川智規さん>
「普通のチップは、皮など雑味の部分も入っているが、「higure」は家具用に乾燥した木の身の部分だけ使えるので、雑味も湿度もないので、直に木の味わいが移りやすい。少量で早く香りがつく」
燻製チップにつけた「higure」という名前には、日が暮れた仕事帰りのひとときを楽しんでほしいという願いを込めています。
<金鱗 石川智規さん>
「男性女性問わず一緒に楽しんでほしい。生活の中のワンシーンで活躍してくれるかなと思いますので」